第3章 10「そうです。私が魔王です」
勝負はこの一撃にかかっている。
なんとなくそんな気がした。俺の燃え盛る左手の剣は巨大化した『影』の爪と衝突した。
「うおおおお‼︎」
競り合い、炎で更に剣を加速する。
「ガルルル…」
獣の威嚇のような声を上げる『影』は確実に俺にパワー負けしている。
しかし、いくらパワーで勝っていようと素の力では圧倒的に『影』が上だろう。実際、炎の加速がありながら俺と『影』の間の距離はそれほど埋まっていない。
片手で、剣一本で、戦っていることもあるが二本目の剣の参戦はどうにも望めそうにないのが現状だ。
なんとかこの状態から脱却しなければ…
ユニアは?俺の剣の炎に当たってしまうかもしれない。彼女もそう考えてるから先程から手を出してこないのだろう。
右手の剣は?ダメだ。足場が無くなればこちらが体制を保てなくなる。そうすれば俺の敗北は確実なものになるだろう。
ちょっと待て…足元から動かさなければいいのか!
「おりゃ!」
足元の剣から炎を出して、『影』に炎を当てる。
「ガラ…」
力が弱まった『影』の背後へと剣を器用に動かして回り込む。そして、炎で思い切り加速した剣で打撃を入れると『影』はだんだんと獣の姿を失い、人の姿へと戻っていった。
「よっと」
二本の剣を一つの大剣に戻し、両手で飛ぶ力を失った女性を両手で受け止めた。
「マサキ様」
そう言ってユニアはドラゴンに乗って近づいて来る。
「危なかった…」
実際、剣の火炎放射を思いつかなければ負けていたかもしれない。
「その女性はどうしますか?」
「そうだな…近くに町とかは?」
「一応ありますよ」
「じゃあその町で少しの間、軟禁してもらえないかな…」
ユニアは少し考えてから口を開いた。
「そこに魔封じの牢獄があるなら賛成です」
「わかった。それでいこう」
俺はユニアに女性を任せ、自分は自分で飛行した。この感覚に慣れたいというのと、ユニアの後ろがその女性に取られてしまったからだ。
これ以上ないほど思い切った打撃を与えたため恐らくまだ眼を覚ますことはないだろうと踏んでいる。
そのまま数分経ったところで町が見えた。
「あそこです」
ユニアが降下するのに合わせてだんだんと高度を落とす。離陸すると、俺たちは多くの人の視線に囲まれた。
至る所でこちらを見ながら耳打ちする光景が見られる。ドラゴンが珍しいのか?俺が珍しいのか?
そんなことを考えていると俺たちの前に一人の体格の良い中年の男性が出てきた。
「あなたは…ま、魔王様」
その男の驚きの声から周りの会話が加速していくように見えた。




