第3章 6「朝帰りですが」
「マサキ様、女の子の部屋に勝手に入るのはちょっと…」
「悪かったって」
先程からもう五度、ユニアから同じことを言われている。
「怒ってる?」
「いえ、別に…」
この会話ももう三度は繰り返している。
「慌てふためくユニアさんは可愛かったけど」
何気なく思ったことを口にした。
そのボソッと言った一言を聞いたユニアの頬は真っ赤に染まっていた。
「な、な、な…」
「な?」
「なんでもありません!」
「えぇ…」
プイッと顔を背けられ、ユニアはスタスタと食堂への道を歩いた。
「待ってよ。そんな怒んないでって」
慌てて俺はその背中を追いかけた。
「知りません!」
結局、朝昼兼用の昼食を食べ終わってから、ユニアに
「この場で土下座したら許してくれる?」
と、問いたところ
「やめてください…わかりました許しますよ」
と言われ、朝の不法侵入の件は終了となった。
「朝帰りとはいい度胸してるわね」
肩に手をかけられ、後ろを振り向くとそこにはテニーがいた。
「おはよ」
テニーは引きつった笑顔でこちらを見ている。
「まーた私だけ置いてきぼりにして…」
「ごめんごめん」
そいえば昨日はすっかりテニーのことを忘れていた。
「んで?ユニアと朝まで何してなの?」
「その言い方は誤解を招きそう….」
「さっさと!」
敬語なしの友達会話になってからテニーは俺に対する遠慮というのがなくなったようだ。
「すみません…」
そうして俺はテニーに『影』と『黒ローブ』のことを話した。
「また厄介なのを持ってきたわね」
「別に持ってこようとしたわけじゃ…」
「まぁ、対策を立てましょう」
「何か案でもあるのか?」
そう言うとテニーは少し考えてから口を開いた。
「そうね…町中に『影』が纏う真っ黒いオーラに反応する魔法陣を張ってみたら?」
魔法陣…こないだ侵攻してくる国の襲来を伝えたアレか。
「魔法陣ですか…でも『影』は変身魔法ではないのですよね?」
変身魔法ではない?
クランの考察とは違ったということだろう。
「そうね。あれは変身魔法ではなかった。けれども身体強化でも超強化でもなかった」
俺の中に光明寺で聞いたミルドの昔話が蘇る。
『サドルカは自分の民に力を与えた。その力の反応は大きく、たった一握りの人間しか自我を保つことはできなかった。他の人々は自我を失い、血に飢えた獣がごとくアルムスの民をその身が果てるまで殺し続けたという』
この昔話が引っかかった理由は二つ。
一つは『獣』というワード。
これはこの問題には必要不可欠な外見だ。
二つ目はサドルカはアルムスと相対する『闇の神』であったこと。
『影』ってもしかして…




