第3章 4「影と黒の関係」
『影』だった男を背に女性を連れて城までユニアとともに歩いた。
その間の会話は特になく、ただ黙々と歩いていた。
俺が話さなかった理由は二つ。
一つは一般人の前で下手に情報を出すことができなかったから。
二つ目は俺がこの状況をあまりよく把握できていなかったから、考える時間が欲しかった。
新しく出てきた『影』…やはりこないだのだけではなかったのだろう。
そうするとほぼ確実に関わっているであろう『黒ローブ』、やつは一体何が目的なのだろうか?
まだ何者でもない…やつは言った。
今から何か起こすつもりなのか?この人のような『影』を使って…
それに今回の『影』が前のに比べて弱かったのも気になる。
理性が保ててないように見えた。
それこそ本物の獣であるかのように…
捕虜のみんなを殺した『影』は人語を操れるほどの理性があった。
今回のと前回のでは明らかに違かった。
強さ的な問題でもそうだ。
今回はスルスルと攻撃が綺麗にきまった。
前回は苦戦を強いられ、ギリギリの戦いをしていた。
そんなことを考えていると城にたどり着いた。
『影』だった人の治療を任せ、俺はユニアに声をかけた。
「ユニア、今から時間ある?」
「もちろんです」
俺はユニアにある場所へ案内してもらった。
そこは牢獄を奇襲した『影』がいる独房だ。
独房内は一切の魔法の発動ができないため、やつが影に潜って逃げる心配がないかららしい。
「起きてる?」
そう青年に声をかける。
「何か?」
あまり元気でない声が返事をする。
「聞きたいことがあるんだ」
あまりこいつとは話したくなかったが場合が場合のため仕方がない。
「で?要件は?」
「お前は『黒ローブ』の人のことを知ってるか?」
「『黒ローブ』…あぁ知ってる。だが、お前に言う必要はねぇな」
挑発的な態度でそう言われる。
「マサキ様、『黒ローブ』とは?」
後ろからユニアが俺に問いかけてくる。
「あとで説明する…とりあえずお前は『黒ローブ』を知っているということだな?」
「あ?あぁ」
「わかった」
そう言って俺は独房を後にした。
中にいた彼はまだどういう意味なのか理解していなさそうだ。
俺が聞きたかったのは『影』と『黒ローブ』が関係を持つか否かだった。
『影』だった男が『黒ローブ』を知っている時点でこの二つに関係性があるのはほぼ確定だった。
「マサキ様、さっきの話…」
「あ、うん」
ユニアに『影』と戦った後に牢獄で出会った『黒ローブ』の話をした。
「性別も何もわからない、謎ですね」
ユニアは顎に手を当て、考えるそぶりを見せた。
外交も大切だ。
周りと仲良くなれば平和的に他の国とも繋がりを持てるかもしれない。
でもまずは内輪の問題を解決しなければ…先にするべきは外交ではない。
「この件を早急に片付けよう」
ユニアは軽く頷いた。