第2章 35「影と黒」
「ユニア‼︎」
俺はユニアやテニーの待っている部屋に駆け込んだ。
俺が入って来たのを見て二人は胸を撫で下ろしている。
「良かった…無事だったんですね」
微笑んでそう言うユニア。
「うん。なんとかなった」
「あいつは?」
テニーの言うあいつはきっと『獣』のことだろう。
「倒したよ。多分まだ死んでない。だから…」
俺の言葉を遮り、上半身に包帯を巻きつけたユウラが入ってきた。
「あいつは俺が殺します…」
絞り出すような声でユウラはそう言った。
「ダメだ」
「なんでです?」
「あいつには罪を償ってもらわないと…」
「罪なら死んで償えばいいだろ⁉︎」
「…」
ユウラの威圧的な発言についつい言葉を失ってしまう。
「ダメだ‼︎」
「なんでだよ?なんであいつを殺させてくれないんだよ…?」
ユウラは今にも泣いてしまいそうだった。
「今あいつを殺したら、あいつの罪はそれで終わってしまう…」
「それがなんだって…」
「それじゃあ死んで行った人達に面目が立たない」
俺の言葉に先程まで俯いていたユウラがフッと顔を上げる。
「あいつらは…死んじゃったじゃないか…」
「そうだよ…死んじゃったよ…」
「だったら…」
「でも、あいつを殺すだけじゃ…死んで行った人達の何十分の一の罰しか受けないことになるんだよ?」
「…」
「俺はそれが許せない。あれだけのことをしたやつがそう簡単に許されてたまるものか…」
「……わかったよ」
ユウラが納得したのを見て、俺はユニアに回復できる人を呼ぶように伝えた。
その後、急いで牢獄に戻り『影の獣』だった者の見張りをしようとしていた。
「脈は…まだあるな」
それは牢獄の中からポツリと聞こえた。
今、あの中には『影の獣』しかいないはず…
回復術師が着くには早すぎる。
いったい誰だ?
「そこにいるのは誰だ!」
牢獄に入るのと同時にそう投げかけた。
『影の獣』でも自分でもない第三者に
「ッチ」
確実に誰かいる。
俺は二本の黒の剣を構え、中に入った。
「やぁ魔王様…」
そこにいたのは黒いフードを深く被り、顔が見えない。
男か女かもわからない。
声だけでは判別もつかない。
「あんたは誰だ?」
「まだ、誰でもない者だ。昨晩に続き私の部下が世話になったな」
「お前、『影の獣』の仲間か…」
「『影の獣』?フフフ、そうか君らは彼を『影の獣』と呼んでいたのか」
「何がおかしい?」
「おっと、これは失敬。まぁいいや…彼はここに置いていくことにしよう。せめてものご褒美だ」
「なんだと?」
「また会えることを楽しみにしているよ。フフフ…」
そう不気味な笑い声を上げながら『黒ローブ』は影の中に消えようとした。
「逃がすか‼︎」
この逃走は一度見ている。
剣を影に向かって投げつけた。
ッザク、音を立てて確かに剣は影に刺さった。
なのに『黒ローブ』には逃げられてしまった。
その後、程なくしてユニア達は回復術師を連れて牢獄に入って来た。




