第1章 5「1日の終わりに」
「マサキ様、これから城の中を案内しますね」
「あ、うん」
この城の中にはありとあらゆる設備があった。図書館に食堂、大浴場、修練場。
城の色々な場所を回っていると外はもう暗くなっていた。
「マサキ様、ご飯とお風呂どっちを先にしますか?」
ご飯、お風呂と来てついついもう一つの選択肢が登場すると思った…
「じゃあ先にお風呂で」
「了解です。じゃあ30分後に食堂集合にしましょう」
この世界の時間の単位は元の世界と変わらず時間、分、秒だった。
ユニアと別れ脱衣所で服を脱ぎ、さっと身体を洗って風呂に浸かった。
「ぷへぇー」
つい情けない声が出てしまった。
どの世界でも風呂は娯楽なのだと確信する。
着替えは持っていないためさっきのジャージをもう一度着用して待ち合わせの食堂に向かった。
「マサキ様おまたせしました」
合流するとユニアは手に何か持っていた。
「それは?」
「あぁこれですか?これはさっき渡し損ねたマサキ様のお着替えです」
ユニアから渡された着替えは基本的に一式全て揃っていた。
パンツに、上下共に青色で涼しげな長袖のシャツとズボン。
「あ、ありがとう」
「いえ、それでは夕飯にしましょう」
ユニアと共に夕食をする際、ついユニアを見入ってしまった。
ほのかに香る石けんの香り、ゆったりした服から見える素肌。
童貞の高校生にはとても刺激が強い。
「どうしました?」
「な、なんでもないよ!」
ユニアとの夕食も終わり、部屋に戻った。
部屋はとても大きかった。
こんなに必要ない。とユニアに言ってみたが、魔王様は代々この部屋です。と言われて終わった。
「まぁいつか慣れるか…今日は寝よ」
色々ありすぎた一日、クタクタだ。
ベッドでウトウトしながら一日を思い出していると、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰だろう?」
ドアに近づいていくとノックの音が強くなり終いにはドアが蹴破られた。
「おいコラ!チビ魔王!まだ起きてんだろ!」
声の主はミッダだった。
「ど、どうしたんですか?」
「いいから行くぞ!」
「えぇ…」
ミッダに両腕を持たれ、宙に浮いた状態で連れていかれた。
「ミッダさん痛いです。そろそろ離して下さい」
「うるせぇ」
「…すみません」
ミッダに連れていかれたのは昼にユニアと来た庭園だった。
「おっし。着いた。さぁ構えろ」
この世界の人は庭園に来ると二言目には『構えろ』という単語が出てくるのだろうか。
「構えろって言われても…」
「じゃあこっちから行くぞ」
そう言うとミッダは消えた。
「アレ?どこ…っぐあ!」
言葉の途中、目の前に現れたミッダにみぞおちを殴られた。
「ぐ、あ…」
言葉が出ないまるで身体中が痺れているようだった。
「あーあー構えないから。まぁいいや明日もこの時間に来いよ。俺がその首飾りの使い方教えてやる。お前が闘技会に優勝できるようにな…」
痺れていて声にならない。
「よし!じゃあ今日は解散!」
そう言うとミッダは庭園から出て行った。
「あえ?おえは?(あれ?俺は?)」
まだ身体が痺れて口や身体が上手く動かないなか自分の意識がゆっくりと遠くなっていくのを感じた。