第2章 30「頼るべくは博識な人」
「さてと…」
三人で朝食を済まし、俺とユニアはある人に会うため町を歩いていた。
「あ、ここです」
ユニアは事前にその人の家を聞いていたらしく、家まで案内してくれた。
「ごめんくださーい」
「ふぁーい」
俺が挨拶してドアを開けるとまだ頭に寝癖のついたクランがあくび混じりの返事をしながら出てきた。
「どちら様?って魔王様!」
そう言うとクランはドアを勢いよく閉め、家に戻って行った。
「クラン?」
家の中で何が起こってるかはわからないが何か心配になるほどドタバタしているようだ。
「来るなら来ると行ってください」
先程までついていた寝癖は綺麗に直してクランが出てきた。
「ごめんごめん、急ぎだったから」
「だからって…もう、とりあえず中に入ってください」
クランに案内され家の中に入った。
家はどちらかというと洋風っぽい。
しかし、案内されたのは座敷だった。
この世界は結構、和と洋が入り乱れたんだな…
「で、要件はなんですか?」
クランはお茶を出しながら聞いてきた。
「実は…」
俺は今日の深夜に起きた出来事をクランに話した。
「そんなことがあったんですか…でもなんで私のところに?」
「俺の知り合いの中で一番博識なのがクランだと思ったから」
そう言うとクランは少し頬を染めた。
「そ、そんな大したことないです」
「それで何か思い当たるものってない?」
クランは顎に手を当て、考えるような素振りを見せた。
「そうですね…確かに人語を操る『獣』など存在しません。私が知ってる限りでは…」
「そっか、じゃあやっぱり思い違い…」
そこまで言ってからクランは、でも。と言葉を遮った。
「その『影の獣』は多分作れます」
「作る?」
そう言うとクランは紙に何かを書き始めた。
「その『影の獣』は恐らく、変身魔法系と潜伏魔法系を合わせて作られたモノです」
「じゃあ犯人は人なのか?」
「そうなりますね」
「でも、変身魔法も潜伏魔法も相当、高度な魔法ですよね」
今まで口を閉じていたユニアが会話に参加した。
「そう、だから犯人は相当絞られる。さらにこれらを同時に使える程、膨大な魔力量だとしたら…」
「犯人は軍隊の人間って感じですね」
どうやら二人は犯人まで行き着いたようだ。
「よし!じゃあ犯人探しに行こう」
「その心配はないですよ」
クランはそう口を挟んだ。
「な、なんで?」
「クランの言う通り、探しに行く必要はありません」
ユニアもクランと同じ意見のようだ。
「だからなんでって?」
「『影の獣』は魔力のない人間を殺したがってるんですよ」
クランに続いてユニアが口を開く
「そうです。待ってれば来るんです、あの二人の元へ…でもあの二人だけではどうにかなるでしょうか?」
「大丈夫ですよユニアさん。ここにいるじゃないですか魔力の無い強い人が…」
クランとユニアはそう言って俺の方を見た。
つまるところ…
「囮作戦ってとこですかね…」
自信なさげに俺がそう言うと二人は
「「そういうことです」」
と完璧にハモって答えた。




