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第2章 28「悲劇はいつも突然に」

 それからというもの捕虜の人たちとはなんとなく打ち解けてきた。

 そろそろ牢獄生活じゃ可哀想に思うほどに、しかし俺がそう思ってもそう考えない人たちもいる。

 そう思い、未だ牢獄での生活をしてもらっている。

 前に助けた秘密調査兵の人たちはこないだ攻めて来た国とはまた別らしいが、同じ科学側ということで普通に話していた。

 そうやって何気なく過ぎていった毎日。

 何かが起きるときはいつもいきなりだ。

 あの時がそうだったように、誰も予告してくれない。

「マサキ様、大変です!」

 それは深夜に起きた出来事。

 血相変えたユニアが部屋に入って来た。

「どうしたの?」

 あくび混じりの声でそう言う。

「捕虜の人たちが…」

「どうしたの?」

「殺されました…」

 いきなり言われたその言葉を瞬時に理解することができなかった。

 先程まで当たり前のように話していた人たちが死んだ?

「嘘だろ?ユニア嘘なんだろ?」

「…」

 目を合わせず下を向くユニアは無言で俺の疑問を否定した。

「はぁ?な…なんで?」

 俺は部屋から飛び出して牢獄へ向かった。

「マサキ様!」

 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…

 彼らが生きていることだけを信じて駆け抜けた。

 牢獄に着きすぐに目に飛び込んで来たその光景はまるで地獄を映し出したようなモノだった。

 灰色だった壁は血の色に染まり、牢獄の中の床には内臓や目などの肉塊が無残に転がっている。

「う…うええええ」

 戦争が終わってからも死体を見ることには一向に慣れない。慣れたいとも思わないが。

 戦争の時には見たことが無いほどに残酷だ。

 牢獄にはすでに数人の学者のような人たちが捕虜の人たちの死の原因究明を行なっている。

 生き残っていたのはたった二人、一人はユウラ、二人目はロウネという少女。

 俺は座っていた二人の元へ駆け寄った。

 二人の前に着くと膝から崩れ落ちた。

「ごめん…」

 俺は二人に謝った。

「なんでマサキさんが謝るんだよ」

「だって…だって君らの仲間が死んじゃったのは…」

「あなたのせいじゃない」

 そう言うのは長い金髪を後ろで一つにまおめている少女ロウネ。

「でも…でも…」

「そんな悲観的になるな。ロウネが言うとうりマサキさんのせいじゃない」

 目に溜まっていた涙が粒となってこぼれ落ちていった。

「あれをやったのは『獣』よ」

「『獣』?」

「あぁ確かにあいつの容姿は『獣』のようだった」

 二人はその時起こったことを事細かに説明してくれた。

 捕虜の全員が寝静まった深夜。

 そいつはまるで影と同化したかのように牢獄に入り込み、彼らを鋭い爪や牙で殺していったらしい。

 そいつを止めようと何人もの人が犠牲になった。

 そしてユウラが戦っていた際にうちの兵士がやって来て、その獣は逃げたらしい。

「『獣』は俺の耳元で最後にこう囁いた」

『魔力のない人間は殺しやすくて楽しいな』

 俺はその言葉に唖然となった。

 そいつは彼らの命をなんとも思っていない。

 身体の奥底からフツフツと何かが沸き立っているような気がした。

「絶対許さない…」

 俺は拳をきつく握りしめ、立ち上がった。

「マサキさん…俺たちも」

「ダメだ」

 ユウラの次の言葉が目に見えていたため言われる前に遮った。

「なんで?」

「魔力のない人間が狙いなんだ。君らが行っても標的になるだけだろ?」

「でも…」

 俯くユウラの肩にそっと手を置いた。

「俺を信じてくれ」

 そう言うとユウラは頷き、横にいたロウネも頷いていた。

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