第2章 23「観光がしたい!」
深夜の間、ミルドと飛鬼が忙しかったため、クランやユニア、テニーと談笑しながらこれからあの敵国の人たちとどう接するべきかを話し合った。
その中で一つ明日実行しようかな、と思ったものがあった。
まずはこの国を知ってもらえばいいと思うというクランのアイディアだ。
一回に数人しか連れて行かないが、見張りの数もそれなりに少なく出来る。
動くメンバーを少なくできればあまり人目につかず観光ができる。
朝十時を回った頃、俺はまた牢獄へ向かった。
「おはようございます!」
俺が元気よく挨拶しても反応は薄い。
「今日はこの国のことをよく知ってもらおうと思って、この国を案内するよ」
やはり、良い反応は戻ってこなかった。
「行きたいぞ!っていう人?」
もちろん無反応。
「じゃあ前の七人!」
「はあ?」
指名された七人は少し批判的に思われるような声が上がる。
「じゃあ、三十分後に迎えに来るからそんな感じで」
そう言って牢獄をあとにする。
そして俺は呼び出していた二人の元へ向かう。
「俺らを呼び出して何するつもりだ?」
そこにいるのは鬼の飛鬼、いつも通り顔色の悪い魔族のミルド。
「今から観光に行きたいんです」
「はぁ?どこに?」
「できるだけ有名どころが良いです」
「…戦争が終わった後じゃどこもボロボロだと思うよ?」
「あ…」
完全に頭から抜けていた。
そうだよな、戦争のあとだもんな…
「あ、でも…」
「どこかあるの?」
「う、うん…」
「じゃあそこ行こ!」
「わかった…」
「んじゃ、ちょっと待ってて」
二人をその場に待たせ、俺は敵国の人たちを迎えに行った。
「おっまたせ!」
見張り役の人から鍵を借り、一緒に行く予定だった七人に出て来てもらった。
「一体どこに連れて行くつもりだ?」
そういうのは金髪の…と言ってもみんな金髪だったのだが、鋭い目つきが印象的な少年。歳は俺とそんなに変わらないように見える。
一つ変わるところがあるとすれば、鍛え抜かれた身体だろう。
拳同士のケンカでは勝てる気がしない。
「遠足、観光、みんなご飯食べた?」
「まだっすね…」
「じゃあ食べることから始めよう」
ユニアから自由に使えるお金をいくらか貰った。
まるで働いてないみたいだ。とかって言ったら、あんだけ戦争中に活躍したんだからこれくらい全然大丈夫です。と、言われた。
「飛鬼さん、ミルドさん、連れてきました」
「おう。ってそいつらこないだの…」
「そうです。昨日みんなで話し合ってこの人たちを観光に連れてこうと思って」
「じゃあ何で俺らだ?ユニアじゃダメなのか?」
「この人たちの見張り兼観光案内かな?」
「まじか…飯ぐらい奢れよ」
二人に昼食を奢ることを了承し、お金を持たない敵国の人たちにも奢る予定でいたので計十人の昼食代を払うことになってしまった。
「じゃあ俺が行きたかった店に行こう」
闘技会が終わってからブラブラ散歩することが多かったため行ってみたい店がいっぱいあった。
俺が連れて行ったのはカレーのスパイシーな香りが漂うお店。
「みんなアレルギーとかってある?」
「あ、あれるぎい?」
アレルギーという言葉はこちらには存在しないらしい。
「嫌いな食べ物とか?」
「別に…」
大多数の人の回答はそんな感じだ。
「じゃあ入ろっか」
そう言って入ったカレーちっくなお店はインドカレーのようなものを出してくれた。
ほぼ丸っきりカレーそのものだったその味に懐かしさを覚えながら、自分を現実に引き戻す領収書に目をやった。
「七千五百エル」
この国の単位エルで書いてある領収書。
俺がユニアからもらった四分の三が飛んでいってしまった。
「はぁ」
細くため息をつき、ミルドが案内してくれるという次の観光場所へと向かった。




