第2章 15「死を恐れ剣を持つ」
クランから言われた『剣を取って戦う』それは人に死を与える行為だ。
「クランは…死が怖くないの?」
「え?」
「ごめん…変なこと聞いた…忘れて」
「いえ、大丈夫ですよ。怖いですよ。誰だってそうです」
「じゃあ…」
言葉がクランによって遮られた。
「私はこないだまで敵兵は死んで当然なんだと思ってました。でも、マサキ様に会って、あなたが敵兵の命を必死に守ろうとする姿を見て、敵兵だろうと何だろうと命は命なんだって気付かされました」
「じゃあ…なんで俺が剣でまた戦うって思ったの?」
クランはニコッと笑った。
「それは…マサキ様なら命を奪うためではなく助けるために使うと思ったからです」
「そっか…」
みんなは俺に命を大事にする。そんなイメージを持っていてくれたのか…
その時、パリーンという甲高い音が響いた。
「今のって…」
「魔法陣が割れた音ですかね」
そっか…じゃあここにも敵兵が攻めて来てしまうということか…
俺は頭の上にあるクランの顔を見た。
怖いなか無理して笑ってくれたのだろう、身体が震えている。
「ごめんね、クラン…ありがとう」
俺は袖で涙を拭い、立ち上がった。
「行くんですか?」
「ユニアとの約束を破ることになっちゃうな。また怒られる」
そう言って笑いかけた。
「絶対に死なないでくださいね」
「うん。絶対ここには近寄らせやしないから」
「信じてます」
そして俺は自室にクランを置いて、下の入り口へ向かった。
そこにはすでに多くの人たちが入り乱れて戦っていた。
もう何人も亡くなったみたいだ。
『この先には行かせない』
そう心に誓って二本の剣を構えた。
相手の装備には剣や銃、手榴弾と多くの武器があった。
「行くぞ!」
大声を出し気合を入れる。
「俺が魔王だ‼︎」
昔から声は大きく、よく通る。
敵兵は魔王という言葉に反応したのかこちらを向いた。
左右から何十人という人が突撃して来る。
さてどうしたものか…
殺すのは簡単だ。剣の刃を炎で拡張して横薙ぎにするだけだ。
しかし、殺すのは嫌だ。
動かない俺を見て、敵兵は銃を構えている。
「オイ、何してんだチビ」
それは何十人もいる敵兵の背後から聞こえる。
瞬間、敵兵の首に一本の線がはいった。
全員の首がボトボトと落ちていく。
身体はバタリと倒れていき切り口から血が流れている。
「おええええええ…」
また吐いてしまった。
朝食も食べていないのに、なぜこんなに嘔吐できるのか不思議になるくらいだ。
「きったねーな」
そう言ってズカズカとミッダは近寄って来た。
「なんで…なんで殺しちゃったんだ‼︎」
感情的になってミッダに言った。
いつの間にか左側を向いていた。右頬が痛む。
「何中途半端な根性で戦場来てんだ!甘っちょろいこといってんじゃねぇよ‼︎」
どうやら殴られたようだ。
甘っちょろい考え…か。
「じゃあどうしたら良いってんだよ!」
「お前何のために剣を取った!この国の人を守るためだろ?ならば戦えバカ‼︎」
どうしたらいいんだ…
「どうしたら…人を殺さなくてすみますか?」
やっと冷静さが戻ってきた。
「あぁ?はぁ…敵を戦闘不能にしろ。俺たちだって鬼じゃねえ、鬼はいるけどな。流石に動けない敵は殺しゃあしねえよ」
ため息の後、呆れながらミッダは教えてくれた。
「戦闘…不能…」
戦闘不能。その言葉から一番最初に思いついたのは脳震盪だ。
脳に強い揺れを与え、戦闘不能にする。
それならば人を殺さずに済む。
「わかりました。ありがとうございます」
ミッダにお礼を言い、城の外へ足を踏み出した。
外は焦げ臭い、鉄臭い、ひどい匂いだ。
「これが戦場か…」
改めて自分が今、戦場に立っていることを自覚する。
巨大ロボットの数もかなり少なくなっている。
どうやらロボットの相手をしてるのはドラゴンのようだ。ホプスやユニアもあそこにいるのだろうか。
残念ながらそれを確認する術はない。
今はまだまだたくさんいる敵兵をどうにかしなければ…
「全員俺が倒す‼︎」
そう言って一人目の標的に剣を向けた。




