第1章 3「トイレの大剣」
大広間に着く10分前
「ヤバイ!ヤバイよユニア‼︎」
「ど、どうしたんですか魔王様⁉︎」
「あ、あのトイレに行きたいです」
「脅かさないで下さい。トイレなら正面を曲がって左です」
「ありがとう、ちょっと行ってくる‼︎」
俺は無我夢中でトイレへ駆け込んだ。
驚いたことにトイレの形状は元の世界の洋式トイレとそんなに変わらないものだった。
「うぉー!」
気張っていると頭の上に何か落ちて来た。
「いったいなあ、なんだこれ?」
落ちて来たのは黒い大剣だった。
「お、重い」
元の世界では特に筋力に自信があったわけでもないので自分の体長ほどあるこの黒い大剣は持ち上げられない。
「どうしよっかなこれ」
大理石と思われるトイレの床に刺さっている大剣。それを局部丸出しで見つめてどういう状態になっているのかを考えていた。
「とりあえずユニアに言っとくか」
自分の尻を拭きトイレから出ようとすると大剣につまずいた。
「ッヤベ!」
つい声が出てしまった。
しかし、床に顔面をつけるまでに大剣は無くなっていた。
「アレ?疲れてるのかな?」
気にせずユニアの元へ戻った。
「ほら、行きますよ」
「あ、でもさっき…」
「後で聞きますから早く」
「う、うん」
現在
「もうアッタマきた‼︎」
「ユニアさんご立腹ですね」
「そりゃそうですよ、なんで何も言わなかったんですか悔しくないんですか?」
悔しい、とかより少しきになることがある。
「ユニアはなんで今日会ったばっかりの俺のことでそんなにムキになってくれるの?」
「なんでってそれは…」
「ん?」
「だって魔王様は最強なんですよ!なんでバカにされないといけないんですか‼︎」
ユニアは強い口調でそう言った。
すみません、俺はそんな強くないです。なんて口が裂けても言えない。
「最強なんです!魔王たる者無敗の魔王じゃないといけないんです!」
「わかった、わかった。でも俺はまだ何も知らないんだ。ゲームで言ったらレベル1だ。だから教えてくれ、この世界のこととか戦いのこととか」
「げーむ?というのはよくわかりませんが、わかりました。魔王様なら優勝できるって信じてます」
「ご期待に添えるようにがんばるよ。あ、そうだもう一つ魔王様ってあんまりしっくりこないんだよね、だからマサキって呼んでくれよ。敬語も使わなくていいよ」
「そ、そんな訳にはいきません」
「頼むよ、その方がこっちもやりやすいから」
「わかりました…でも敬語では話しますそこは譲れません」
「わかった、それでいいよ」
敬語はダメだったがユニアは名前呼びをすることを了承してくれた。
「じゃあ話してる暇はありません。今すぐ特訓を始めましょう。さぁ‼︎」
ユニアは俺の手を強引に引っ張って行った。