第2章 8「ダンジョン」
現在俺とユニア、クランの三人は階段を登って法律部に向かっていた。
「ねぇユニア」
「なんです?」
「クランってそんなに凄い人なの?」
ユニアはこっちを向いて驚きの表情をした。
「当たり前じゃないですか…彼女の年齢で法律のことまで理解している人ってそんな多くないです。私もさっきクランさんに言われるまで気づかなかったんですよ?」
「そうなんだ…へぇ」
前世界でも法律や政治というのは複雑であったが、この世界でも複雑なモノなのだろうか。
考えてもわからないことを考えているとユニアの足が止まった。
「着いたの?」
「はい。ここが法律部です」
ユニアの目の前にあるのは普通の扉。
開くとその向こうには長い机といくつものイスが並んでいた。
使われていないのか机の上にはホコリが溜まっている。
「その法書ってのはどこにあるの?」
「えーっと…」
周りには多くの本が並んでいる。
いったいどの本が法律なのか俺には見当もつかない。
「すみません…わかりません」
ユニアは頭を下げて言った。
「そっか。なら仕方ない、しらみ潰しで探そう」
「マサキ様!これの中とかじゃないですか?」
そう言うクランが指差すのは真っ黒い箱だ。
「本棚じゃないの?」
「あんな貴重な本を本棚に並べるとは思えません。法書はこの国に一冊しかないんですから」
「そうなんだ…」
そのブラックボックスは黒光りしいかにも硬そうだ。
「これってどうやって開けるの?」
「さぁ?よくわかりません…」
「ユニア!この箱の開け方知ってる?」
本棚を見ていたユニアに大声で声をかけた。
「その黒いやつですか?それの名は『ダンジョンボックス』って言うんです。使用者本人なら何事もなく開けられますが…それ以外の人が触るとダンジョンに引きずり込まれます」
ダンジョン?前世界のゲームやアニメによく出てくる迷宮のことだろうか?
「そのダンジョンをクリアすればこの箱は開くの?」
「そりゃあまぁ」
「そっか。なら話が早い」
俺はダンジョンボックスという名の箱に触れた。
「ちょ、何をする気ですか?」
「この箱開けに行ってくる」
ユニアにそう告げた後、周りが白い光に包まれた。
思わず目を瞑るほど強い光だ。
目を開くとそこに広がっている景色は先程までの薄暗く、机とイスと本棚しかない空間から一変。
草木やツルなどがいたるところに生え、多くの動物の鳴き声がする。
いわゆるジャングルってとこだろう。
見渡す限りの木々、いったい何をしたらクリアなのかくらい聞いてくるんだった。
「はぁ、いったい何をしたらいいのかって顔してますね。マサキ様」
そう言われて声の方向を振り向くとユニアと顔を膨れさせたクランがいた。
「え?二人ともなんでここに?」
「ダンジョンボックスは触った人の周りの人達も巻き込まれるんですよ」
「なんで先に言ってくれないんだよ」
「言う前にマサキ様が触っちゃったんですよ、私みなさんに比べたらザコなんですよ?勘弁してくださいよ…」
グダリと脱力感溢れるポーズでクランはそう言った。
「ごめんごめん…で、ユニア。これはいったいどうしたらクリアなの?」
「えーっとダンジョンのボスを倒せば終了のはずです」
「じゃあ、そのボスは?」
そう言うとクランがプルプル震えた指で俺の後ろを指差している。
「あ…いましたね」
そう言われ、後ろを振り向くと木の巨人が立ちはだかっていた。
「マジで?」