第7章 50「意地を張らずに直すぜ左手」
ニーナ、ユウラ、ロウネの三人はガルガ達にバレることなくこの国を脱出出来たらしい。というのもこの国は外国からの襲撃のための魔法陣が領海に広がっている。
それは入るときはもちろん、出るときも反応する。決してガルガがそれをスルーしたわけではない。
凄い魔法使いらしいシグマが彼らの船に一定時間内ならばどんな魔法にも反応しなくなる潜伏性能の高い魔法をかけたそうだ。
こうしてガルガレドと戦うためそれぞれの特訓が始まった。
ニーナ達外国グループは武器開発と兵の調達。
飛鬼は風の派生属性である雷属性を習得しようとしている。
ユニアはハンヌ自ら闇の力の使い方を伝授されている。
俺はというと……
「マサキくんはとりあえず、その腕をどうにかしようか」
シグマがニコやかに言った。
シグマの言うそれは俺が戦争のときに失った左腕を示している。確かに左腕があるに越したことはないのだが、
「でも、この手は……」
「なんだい?」
「この手は自分への戒めなんです」
そう言うとシグマは興味深そうに「ほう」と言った。
「前のブレイブとの戦いで俺は大事な仲間を失いました。俺の判断に迷いがあったから、俺の集中力が欠けていたから、俺の動きが鈍かったから、彼女が……テニーが犠牲になりました。俺はそれを忘れないためにもこの左腕は……」
そこまで言ったところでシグマが首を傾けていることに気づいた。
「君が後悔しているのはわかるが、今考えるのはそのテニーちゃんのことじゃない。国のことだ。それはわかってるね?」
大人しく頷いた。
「ならば、腕は復活させておくべきだ。ガルガレドは強い、隻腕で勝てるほど甘くないしそれに……」
今俺たちがいるのはエルフの里にある山の開けた場所。そこにハンヌ、ユニア、飛鬼が各々何かしている。
シグマはハンヌと特訓しているユニアに目をやった。
「君にとって、彼女は大切な人間なんだろ?」
「っな!」
急に言われ、答えに戸惑う。そんな俺を見てシグマはケタケタ笑った。
「いいねぇ、その初々しい感じ。確かに君にとってテニーちゃんも大事かも知れない。でも、君がその左腕を治さなかったことでユニアちゃんが傷ついたら?死んでしまったらどうする?」
「…………」
「それでも君は過去の戒めと言って左腕を治さないかい?後悔はしないかい?」
俺の意思は決まっていた。でも、変な意地を張った自分がその回答を口から出すことを拒んでしまう。
「でも、」
「でも?なんだって言うんだい?」
「いえ、その……」
シグマは言葉の続かぬ俺をゆっくり待った。
「治します、左腕。テニーのことは大事です。でも彼女のことを俺が忘れるわけがない。覚えてさえいれば後悔はいつでも出来る。謝ることならいつでも出来る。それに彼女に貰った命です。腕一本で意地を張るのはやめます」
人の命と同時に失った左腕。今度は人の命をまもるに左腕を復活させる。
「そうこなくちゃ!じゃあ行こうか」
「行くってどこにです?」
てっきりここで治してくれるものだと……
「何ってそりゃ材料集めに決まってるだろ?」
材料って……カレーでも作るつもりなのか?
いや、でも会話の流れからして左腕だよな?
そんなことを考えながら渋々シグマについて行った。




