第7章 47「私の血」
ユニアはシグマの山小屋から出て行った。
「ちょ、ユニア!俺行ってくる!」
ユニアの後を追いかけようと、そう言って俺も飛び出す。
「ユニア!待って!」
呼びかけるも聞く耳を持たず、走る足を止めようとはしない。
「くっそぉ!」
俺も突き放されないよう、なんとか頑張りながら後を追う。
ユニアが止まったのはいつぞやに飛鬼と話した河原だった。
「マサキ様……私は一人で大丈夫です。皆さんのところに戻っていてください」
振り返らず、ユニアは俺にそう言った。
「あぁ、知ってる」
そう、知っている。俺は知っているんだ。俺自身がそういう人間だったから。
「ユニア……」
無理しているときこそ、人に迷惑をかけたくなくて……一人で大丈夫って言うときこそ人を必要としているんだ。
「座ろう?」
俺は河原の土手に座り込んだ。ユニアも何も言わずに横に座る。
「大丈夫……って聞かない方がいいか」
「……」
ユニアは肯定も否定もしなかった。ただ、涙ぐんだ目が日に照らされてキラキラ輝いて見えた。
朝からバタバタしていて、思い返してみれば今日初めてゆっくり座ったかもしれない。
「ユニア……話してくれないか?ダメ……かな?」
渋々横を見るが、隣に座るユニアは顔を自分の膝に埋めている。
「先代魔王は……エルレは私を我が子のように可愛がってくれていました」
肩を震わせながらユニアは話し始めた。
「あの人がいてくれたから、私は生きてこれました。周りからの暴力も悪口も陰湿なイジメも我慢出来ました。信用していたんです、エルレという男を……」
俺はユニアの言葉に黙って耳を傾けた。
「でも私はあの男まで裏切られた。私に魔法を教え、剣を教えた男に裏切られたんです。確かにニーナに言われてから薄々気づいてはいました……でも、実際確信を持つとこうも辛いんですね……はは、笑っちゃいますよ」
ユニアは顔を埋めたまま、深いため息を吐いた。
「魔王の血が混ざっていると初めからわかっていればイジメになんて会わなかったんですかね……差別になんて会わなかったんですかね……人から後ろ指を指されることをなかったんですかね……」
言いたいことを言い終えたのか、ユニアは黙り込んだ。俺もなんと言ったらいいかわからず、口を閉ざす。
ユニアに聞かれたことの答えを探そうと脳みそを回転させる。大したことは言えないが……
「魔王の血……かぁ、どうだろうね。俺にはわからない。でも今までの人生がそんなに悪かったならこれからの人生はきっといいことずくめだと思うよ?」
「え?」
ユニアが俺の言葉に反応して赤くした目でこちらを見てくる。
「悪い事の次には良い事があるに決まってる。人生山あり谷ありだよ……だから、」
「山あり谷ありですか……面白い言葉ですね。そうだと良いんですけどね……本当に」
「大丈夫だよ、ユニア。俺が……魔王が付いてるからさ!」
「そうですね……私にはマサキ様がいますもんね」
そう言ってユニアは笑った。




