第2章 6「筋肉の巣窟」
ユニアは自分の話をし始めた後、またいつも通りの明るいユニアに戻った。
それから何気ない会話を交わし、ザクトに着いた。
「マサキ様、ここがザクトです」
ザクトというその都市は一見するだけで砂漠だ。
昼過ぎにサファラを出たのでもう夕方だ。
だというのにこのザクトはまだ日が厳しい。頭が熱を持って発火しそうだ。
自分のシャツの首元を手で仰いでいるとユニアはいつも俺が羽織っているローブを渡してきた。
「この地は日が強いので、ローブを着てたほうが日が当たらなくて楽ですよ?」
「でもユニアは?」
「私も持ってますので安心して下さい」
「そっか」
ホプスはユニア曰く軍隊の基地だというところに着地した。
「これはこれはユニア久しぶりだな」
そう言って近づいてくるのは丸坊主で筋骨隆々、Tシャツの上からでもはっきりわかる胸筋。一目見ただけでこの男には喧嘩を売らない方がいいとわかる。
「ユニアこの人は?」
「この人は軍隊の人です。名はレルです」
「レルさん。俺たち軍隊長に用があるんです」
「あ、あなたは魔王様じゃないですか!聞きましたよ、闘技会に優勝したんですってね。それで軍隊長でしたっけ?ならこっちについて来て下さい」
レルという男の後ろについて行き、軍隊の基地の中に入った。
そこには多くのマッチョ達がいた。
大体のマッチョは俺たちを見ると驚いたようにもう一度見た。
「視線がキッツイね」
ポツリと俺が呟いた。
「仕方ないですよ。なんてったって魔王様ですよ?」
「確かにそうではあるけど…」
驚くのはわかるけどそんなに見なくたって…
女性の視線ならともかく男からの熱い視線などノーサンキューだ。
「こちらです」
そう言ってレルは一つの部屋の前に俺たちを案内した。
「それでは」
一礼しレルは去って行った。
「失礼します」
ユニアはドアをノックし、そのドアを開けた。
そこには筋骨隆々なスキンヘッドの男が足を組んでイスに座っていた。
「やぁやぁこれはユニア殿。そちらのお方は…魔王様ではないですか!」
スキンヘッドの男は驚いたような顔をしてこちらを見た。
「ど、どうも」
「申し遅れました。私の名はラッグと申します。ここで軍隊長をしている者です」
「そうなんですか。あなたが軍隊長さん」
「それで、この地にはどんなご用件で?」
「あ、あぁ単刀直入に言うけど…」
そうしてラッグという男にここに来た経緯を説明した。
「そうですな…」
ラッグは難しい顔をして自分の顎を撫でた。
「はっきり申しますと不可能ですな」
「え?」
「申し訳ありません…秘密調査兵等の敵国の人間は処刑する決まりなのです。変えられるとしても何日かかることか…」
「そ、そんな…」
今日中に変えないとあの人達の命が…
「そう気に病まないでください」
「でもユニア…このままじゃ…このままじゃあの人達が…」
「仕方ありません…彼らは元々敵兵なのですから、マサキ様が気にすることじゃありませんよ」
「でも…でも…」
今にも目から涙が出てきそうだ。
自分の不甲斐なさが悔しい…
人の命が目の前で失われるのがとても怖い…
自分の魔王という地位なら一日で法律を変えられるなどと考えた甘い自分を殴り飛ばしたい…
色々な感情が入り混じり、ついに目から涙が溢れてしまった。
「すみません。魔王様…こればっかりはどうにも…」
ラッグは申し訳なさそうな顔でそう言った。
「とりあえず…サファラへ戻りましょう」
ユニアに手を引かれ、またサファラの城へ戻った。




