第7章 40「奪われた剣」
「まぁ、死ね」
「っうぐ……」
俺に向かって振り下ろされた剣は俺の胸に刺さる寸前で止まった。
「……」
影は何か考えるように俺の方を見ている。
もう数センチ剣が落ちれば俺の心臓に冷たい刃が届くことだろう。
「うん、心臓はダメだ。それで一体化されたらたまったもんじゃない」
そう言って振りかぶり直す。次に狙うのは俺の首だろうか?
未だ身動きの取れない俺はただ、その光景を見ることしか出来ない。
「マサキ様!」
ユニアの声が聞こえるが、その方向からも金属音が響いているのを聞くと、こちらに助けには来れないだろう。
「改めて、死ね」
振りかざされたサドルカの剣は何かに弾かれた。その後、何度サドルカの剣を振り下ろしても俺の首に届くことはない。届くのは剣と剣がぶつかり合ったときの金属音に似た音。
なんだろう?飛ぶ……斬撃?アルムスの剣の加護とかそういう話?
違う!肌を撫でるようなこれは……そう、風だ!
「マサキ!」
屈強な体に抱えられ、俺と影の距離はどんどん離れていく。
「なんだよ……邪魔しないでよ」
俺を壁際に連れて行き、壁にもたれかかせるとその男も向き直る。
「そういうわけにもいかねぇんだよ。こちとら、魔王の親衛隊だかんな」
そこに立っていてたのはミッダと飛鬼、ユニアの方にはオルドとユウラがいる。
「殺したいのはそこの魔王様だけなんだけど……どけるつもりは?」
「毛頭ないね」
そう言って飛鬼は剣を構える。
「はぁ、なら仕方ない。今回は手を引くことにしよう……次は無いよ」
影の一人はサドルカの剣を収め、もう一人に合図を送る。
「じゃあね、異世界の人」
俺に視線を向けながら、二人は影の中に沈んで行った。
「待ちやがれ!」
飛鬼が追おうとするとミッダが止めた。
「また厄介なのが出たな」
そう言って俺の方に歩み寄る。
「大丈夫か?随分ひどくやられたじゃねぇか」
「あはは……いてて」
その後、ミッダに背負われながら城へと戻った。
サドルカの剣は結局奪われてしまった。これではまた、大規模なシャグルー化を起こされてしまうかもしれない。
やつらの狙いはどうやら俺の魔王の座らしい。奪って何をするつもりなのか、そういえば前に魔族の郷を訪れた際に黒ローブが言っていたような気がする『あの人の時代を取り戻したい』そう言っていた。
その時の黒ローブがドュラルートの娘ルーナだったのか、それとも新たな黒ローブだったのかは不明だが、どちらにせよ俺がこの座を退くわけにはいかないのは変わらない。
そんなことを考えながら目を閉じて、眠りに落ちた。
安心しきっていた。この城の中は安全、敵は黒ローブと影の獣だけだと思っていたから。
自分で自分が情けなくなる。




