第7章 38「昼過ぎの奇襲」
昼食を食べ終え、パトロールを兼ねた散歩にでも行こうかと、ユニアと町を練り歩いていた時のことだ。
「影の人はあれから姿を出しませんね」
影。というのが表しているのはこの前脱獄した影の獣のことだろう。
「うん、確かにね。どこかで細々と小さな幸せでも掴んで生活してんのかもね」
別に無くも無さそうだが、もしそうだった場合、俺が許すわけにはいかない。彼はまだ罪を償い切っていない。捕虜としたルナラナ人の仇なのだから。
「そうですかねぇ?私は何か企んでいるような気がしてなりませんけど…….」
ユニアの意見に頷いて同意する。俺も彼が細々と田舎で畑を耕しているとは思えない。
そんな話をしながら、辺りに建物が多い地帯に入ったときのことだった。
突然物陰から現れた何者かが俺の腰に付いていたサドルカの剣を奪い去ったのだ。
「な!」
奪ったのち、そいつは影に潜るようにして姿を消した。
影……‼︎
頭が処理を終える前に体が動いていた。
影が隠れられそうな物陰は二つ。その二つに炎の神剣を一本ずつ突き刺す。
するとそこから出てきたのは二人の影の獣。一匹は丸腰、一匹は腰に今奪われたサドルカの剣を付けていた。
「魔王がシャグルーの影潜りに対する知識があることは知ってたけど、中々の反応速度だね」
喋った。ということはこのシャグルーは脱走した影の獣とグルになっているということか?
「えぇ、俺も過去にやられましたから」
そういうのは先日脱走した影の獣。
俺は腰からアルムスの剣を引き抜いた。
「ユニア、いくよ!」
「はい!」
俺とユニアは同時に地面を蹴り、それぞれシャグルーと対面した。
俺が相手するのはサドルカの剣を持つシャグルー。
「うん。いいね、何年振りだろ……」
シャグルーはサドルカの剣を引き抜いた。
「え!」
サドルカの剣を使える……でも、ドュラルートに見せてもらった本には最後は俺の名前で終わっていた。
「なに、驚くことじゃないさ」
シャグルーは抜き身になった剣を俺に向ける。
「さ、準備運動程度に勝負しようよ。魔王マサキ」
右手で剣を握りながら、目の前のシャグルーに問う。
「お前たちの目的はなんだ?」
そんな時間稼ぎ程度のセリフを投げかけるとシャグルーは人とはかけ離れた獣のような鼻を鳴らした。
「何、時間稼ぎのつもり?無駄だよ。教えるわけないじゃん」
そう言ってサドルカの剣が俺の首を狙って迫る。
「っうぐ!」
間一髪で剣で軌道をずらしながら、しゃがんで避ける。
闇の力は光の力で打ち消せる。こちらの方が分がいいはず。
「じゃあさ!こういうのはどう?」
俺に剣を叩きつけながら、シャグルーは続けた。
「魔王様がこの世界の人間じゃないって公表してくれたら教えてあげるよ」




