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第2章 5「ユニアの過去」

「ねぇユニア…」

「なんですか?」

 ホプスの背中に乗って約一時間程経過しただろか?

 一つ気になることがあった。

「聞きづらいんだけどさ…」

「はい?」

「昼間に見かけた秘密調査兵の人達はみんな髪が金髪だったんだ…この国の人達は基本的に黒髪だ。ユニアの髪はなんで金髪なんだ?」

 テニーやクラン、ミッダ達はみんな黒髪だ。逆にそうでない人をユニアしか見たことがなかった

「あぁこれですか?これはですね…」

「いや、いいんだ…言いたくないなら」

 ユニアの口調は少し重めだ。あまり話したくないなら、話してくれるまで待とう。

「いえ、いいんです。いつかは話そうと思っていましたから…」

 そう言ってユニアは自分の生前の話をし始めた。

「私が生まれる前、敵国とこの国が戦争をしていたんです…敵国の人間は金髪が特徴でした。私の母はこの国の兵士として戦っていました。でも…母以外の班の人間は全滅してしまいました」

 俺は静かに語るユニアの言葉を何も言わずに聞いていた。

「残された母は捕虜として敵国に捕まり、そこで多くの暴行を受けました。国から救出されるときには母は妊娠し、私を身ごもっていました」

「…え?それじゃあ」

「はい…私は敵国に強姦され産まれたんです。だから私の髪は黒ではなく…金色なんです」

「なんか、ごめん…軽々しく聞いていいことじゃなかった…」

「いいんですよ…悪いのは母でもマサキ様でもないんですから」

「…」

 何を言えばいいのかわからない。相手の触れてはいけない部分に触れてしまった気がした。

「嫌いになりましたか?そうですよね…敵国の血が流れてる人間など好きになれるわけもありませんね…すみません」

「そ、そんなことないよ。ユニア…」

 続きの言葉が出てこない。ここでユニアを慰められるような良い台詞が…

「優しいですよねマサキ様は…死刑囚を助けるために法律自体を変えようとしたり、混血の私にも優しくしてくれたり…」

 きっとユニアは今まで混血というだけで…敵国の血が流れてるというだけで差別の対象にされていたのだろう。

「ユニア、俺…」

 そこまで言ったところで声が出なくなった。

「俺はユニアが…」

 この胸の中でムズムズする気持ちを口から出したらどれだけ楽だろう。

 しかし、それによって今までの関係を保てなくなるのがとてつもなく怖い。怖くてたまらない。

 こういうところがダメなのだろう。

 肝心なところでいつも言葉が詰まってしまう。

 相手に気持ちを伝えずに終わることがどれだけ悔しくて悲しいことかなんて前世界で学んで後悔したはずなのに…

「俺はユニアは…とても素敵な女性だと思うよ」

 俺にはこれが精一杯だ。

 そう思いながら続けた。

「感情が豊かで…」

 出会ってから今までのことを思い出す。

「いっつも元気で…」

 ユニアは背を向けたまま黙って俺の話を聞いていた。

「混血だなんて関係ない。ユニアは…他の人となんにも変わらない。だから…」

 そこでユニアが泣いていることに気がついた。

 俺は言葉を続けるか悩んだ。

 しかし…

「だから、これからも一緒に居てくれないか?」

 俺が悩んでいるのを他所に口が勝手に言葉を進めていた。

 ユニアは泣きながら何回も頷いた。

 袖で何回も目を拭って涙を必死に止めようとしていた。

 一方、俺は頬が熱を持っていることに気がついた。

 さっきの台詞ってなんか告白みたいじゃないか?

 自分の言葉を振り返って急に恥ずかしくなってきた。

 空を飛び始めてから、ユニアと二人きりのこの空間が、まるで自分とユニアしかこの世界に存在しないかのように感じていた。

 そんな二人きりの世界だったからこそ、前世界では一度も言えなかったような台詞を言えたのかもしれない。

 すると急にユニアがこちらを向いた。

 その顔は今まで見たことないほどにキラキラして、それでいてイタズラな笑顔だった。

「やっぱり…マサキ様は優しいですね」

 その顔を見てつい、ユニアを抱きしめそうになってしまった。

 それほど彼女の笑顔は魅力的だった。


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