第2章 2「公開処刑」
クランと別れてから一時間ほど経過しそろそろ城に戻ろうかと考えていた頃、人だかりを見つけた。
何をやっているんだろう?
そう思って近づいた。
するとそこには処刑されるのであろう手足を縛られた人が数人、その人達を連れてきた兵士が二人、そして彼らの向かう方向には前の世界でいうところのギロチンが置かれていた。
「え?」
思わず声が出てしまった。
「あれ?魔王様?」
そう言うのは先程別れたばかりのクランだ。
「これはいったい?」
「これは公開処刑ですよ」
「こ、公開処刑だって⁉︎なんでそんなことが行われてるんだよ?」
「ほら、始まりますよ」
そう言われクランの指の先を見ると何やら兵士の一人が紙を出して何か始めようとしていた。
「これより、敵国『グラム』の秘密捜査兵の死刑執行を行う」
グラム?未だ聞いたことのない単語だ。
「なんで?なんで死刑なんてしないといけないんだよ?」
「情報も出てこない敵国の人間を生かしておいても食糧の無駄だからじゃないですか?」
確かに…確かにそうかもしれない。
しかし…納得はいかない。
「…邪魔したら怒られるだろうな」
でも、人が死ぬよりはマシだろう。
「クラン、ちょっと離れててくれ」
「えぇ…何をするつもりですか?」
身体に力を入れて黒い大剣を出す。
そして闘技会の決勝戦の時のように剣を二本にする。
周りの処刑人に対するブーイングが大きすぎて大剣を地面に刺さったときの金属音はあまり響いていない。
兵士の一人が今にもギロチンの刃を落とそうと剣を構えている。
俺は右手の剣を処刑人の方に向け、もう一方を肩に背負う。
「ちょ、魔王様。まずいですよ」
クランが耳元で囁く。
「魔王様じゃなくてマサキだ」
そう言った瞬間、右手の剣を加速させる。
兵士は剣で縄を切り、刃を落とした。
その刃を右手の剣と左の剣を交差させて受け止める。
「っう」
下に処刑される予定だった人がいるため剣から炎を出してしまっては火傷させかねない。
「す、すみません…これ重いので首どけてもらっていいですか?」
そう言うと上を見上げた男は一瞬驚いた顔をしてから安堵の表情になり頷いた。
男が首をどかしたので、刃を下まで落とす。
そして次に飛んできたのは兵士二人の剣だった。
「貴様…何者だ?」
そう言うのは先程紙を読んでいた男だ。
「名乗るほどでもないよ。いろんな意味で」
「処刑を邪魔するなど貴様…魔王様に殺されるぞ!」
そう言うのは先程縄を切った男だ。
「まるで魔王が楽しみにしてるような言い方はやめてくれ…失礼だろ?」
周りの野次馬からは「なぜ邪魔した?」「そこをさっさとどけ‼︎」などの声が上がっている。
「じゃあいいよ」
俺はローブのフードを外し、顔を出した。
「俺が魔王だ」