第1章 24「闘技会終了」
片足で壁伝いに控室に戻る途中の道でユニアとテニーは待っていた。
「おかえりです!マサキ様‼︎」
「うん、ただいま」
テニーと短く言葉を交換し、次にユニアの方を向いた。
ユニアは俯き、泣いてしまっていた。
「ま、まじゃきさま…おめでとう…ございます…」
「何泣いたんだよ…やめてよ、もらい泣きしちゃうじゃん…」
泣いてるユニアに釣られてこちらまで目頭が熱くなってしまった。
「だって…だって…ホントに約束守ってくれるなんで…おぼってなかったから」
「なるほど…そいえばそうだったね」
一週間くらい前まで剣を振ったこともなかった自分が猛者揃いの闘技会で優勝することが出来た。
あぁ…俺、頑張ったなぁ…
そう考えるとなんだか
「…う、うぅ」
さっきまで目に溜まっていたものが溢れ出して来た。
「何道で二人揃って泣いてるのよ!泣くなら控室まで戻ってからにしてよ」
「うん…ぞうだね」
そう言って三人で控室に戻った。
ドアを開けるとイスに飛鬼が座っていた。
松葉杖を脇に置き、左足を包帯でグルグル巻きにしていた。
「おぉマサキ、優勝おめでと!」
「ありがとうございます。飛鬼さ…」
次の言葉が詰まった。飛鬼はさっき俺が勝った相手に負けたのだ。
その相手に勝った自分が飛鬼に何を言っても嫌味に聞こえてしまうのではないか。飛鬼を不快にさせてしまうのではないか。そう思うと次の言葉を躊躇するには十分な理由になった。
「マサキ…勝ってくれてありがと」
「…いえ」
未だ言葉が見つからない。
「何詰まってるんですか、早く座って下さい…足怪我してるんですから」
「あ、あぁ」
「なんだお前も足怪我したのか!」
飛鬼との沈黙を破ってくれたのはさっきまで泣いていたユニアだった。
「あ、はい…蹴ろうとして樹の拳を思い切り蹴ってしまって…」
「ははあ!そりゃあ痛いや、あの速さで蹴ったんだもんなぁ」
飛鬼は笑ってくれた。どうやらいらぬ心配をしてしまったらしい。
「あの、マサキ様。医務室行かなくていいんですか?」
そうテニーは心配そうに言った。
「あぁそうだね。一回行ってくる」
三人を控室に置いて行き、医務室に向かった。
医務室に行くと、ミルドがベッドに座っていた。
「「あ!」」
ミルドと目が合い、お互い声が出た。
「やぁ…魔王様」
ミルドは試合前のように弱々しい声になっていた。
「どうも…」
先程、医務室の先生に聞いたとき、自分の足にヒビが入っていると言われ、俺も松葉杖になってしまった。
「あの…ミルドさん、大変聞き辛いんですけど…」
「ん…なんだい?」
「勝ったら教えてくれるって言ってた…アレなんですけど…」
ミルドは少し考えるように顎に手を当てると
「あぁ…アレね」
そう言ってミルドは試合中に約束していた『人間を嫌っている理由』について話し始めてくれた。
「僕は…魔王様に憧れていた。あぁ、マサキ様じゃなくてね…」
「あ、マサキでいいですよ」
「そう…マサキの前まで、基本的に魔王ていうのは魔族がなるものだったんだ。だけど…僕らの種族は魔王の印『炎の神剣』に選ばれなかったんだ。それで人間が『炎』に選ばれたって聞いたとき人間に対する憎しみの念が湧いてきたんだ…僕にとって魔王は最強無敗の存在だったんだ…嫌だったんだ…弱い人間が魔王になるのが…でも違った…あんたは強い…少なくとも僕よりは…だから…あんたは魔王だよ…うん」
そんなことないと言いたかった。
確かに優勝はした…それでも他の人に比べたら俺はまだ弱い。
肉体的にも精神的にも…
「俺はまだ人の助けがないと何もできないんです。だから…これから、よろしくお願いします」
「うん…よろしく」
自分の弱さを出来るだけ露呈した。
ミルドは思いの外、友好的に話してくれた。
そんなミルドと共に表彰式にむかった。
ミルドは口数こそ少ないが、俺の話すことに笑って返答してくれた。
表彰式が始まり、立たされてるのは俺とミルド。なんだか、静かな雰囲気の表彰式のとき恐らく一番偉いのであろう長い白い髭をもつ年老いた男に賞状と盾みたいな物を貰い、何か一言と言われ少し戸惑った。
「ふぅ…これから魔王を務めさせていただくマサキです。よろしくお願いします」
最初に皆の前でオドオドしながら言った台詞を胸を張ってもう一度言った。
観衆は皆、笑っている。
しかし最初この台詞を言ったときのような嘲笑ではない。
皆が自分に対して賞賛してくれる。
俺はこれで少しは認められたのかな?
そう思った。
こうして闘技会は幕を閉じた。




