第6章 21「勘と願望」
予想外に早い朝食をとった後、それに合わせて出発時間も早まったため、午前七時現在もうドゥラルートの謁見の間に五人全員が揃っていた。
「随分と早い出発だな、あと二、三日くらい滞在していけばどうだ?」
ドゥラルートは俺に向かってそのようなことを言ってくるが、そうもいかない。
「そうしたいのは山々なんだけど……」
黒エルフの誰かが犯人では?と、疑った手前、居心地が悪いし何より
「早くシャグルーの件も調べないとなので」
「そうか、それは残念だ」
そう言うドゥラルートは本当に残念そうだ。この人のことはかなり警戒していたのだが、俺の杞憂だったようだ。最初に剣を交えたときよりは全然好感が持てる。
「なら、こちらでもそのシャグルーについて調べておこう」
「ありがとうございます」
俺とドゥラルートの会話が終わると後ろにいたエルルートがひょこっと顔を出した。
「話が終わったなら出口に連れて行くね」
「色々お世話になりました」
「また来いよ」
エルルートは指をパチンと鳴らし、世界を真っ白にしてから真っ黒にした。
もう一度指を鳴らすと今度は身体が重力に反して浮き始める。
「出口で効果は消えるので」
エルルートの声は反響しながらも耳に届いた。
「わかった。ありがとうエルルート」
「また来てくださいね」
そう言うエルルートの姿ははっきりと見えた。手を振るエルルートに五人全員が手を振り返す。
少しするとエルルートの姿は消え、急に身体が重力に従い始めた。
「っうげ!」
またも受け身を取ることが出来ず、無様に地面に落ちた。
落ちたのは入ってきた洞窟と同じ場所だ。石版に触れることによって開かれた壁は閉じ、ただの石壁となっていた。
灯をつけるため、黒の大剣に火を灯して片手で持つ。
遅れてユニアがカバンから松明を取り出して火をつけた。
「ありがとうございます」
ユニアの松明が燃えるのを見届けてから俺は黒の大剣をしまい、五人縦一列の一番後ろに並んで洞窟を歩いた。
今回の黒エルフの郷?村?町?への遠征はドゥラルートが今回の件に関与していないということを確認することしかできなかった。
手がかりも何一つない。これでは八方塞がりだ。
「うーむ」
まだドゥラルートが嘘をついていないという確証があるわけではないが、頭を振ってその可能性を振り払う。
きっと、きっと違うと信じている。
ただの勘……というか願望に近いが、ドュラルートは敵であって欲しくない。
だが、そうすると黒幕は一体誰なんだ?
「むむ……」
思考を巡らせるが一向に答えにはたどり着かなかったが、そこで思考を停止させることもできなかった。




