第6章 18「隣の布団への質問」
ドゥラルートの召使いらしき黒エルフに部屋に案内され、室内にあった風呂に浸かって時刻は夜九時になった。
俺は飛鬼が九時に寝るという良い子であったため、飛鬼の横に敷いた布団に横たわっている。
「まだ、起きてますか?」
まだ寝息が聞こえなかったため、何となく声をかける。
「あぁ、まぁ」
声が気持ち小さめなのはもう眠たいからだろう。
「ちょっと聞きたいことがあったんですけど、眠そうなので明日にします」
そう言って俺も眠ろうと思い、飛鬼に背を向けるように寝返る。
「いや、今でもいいぞ」
「いいんすか?」
会話中なはずなのに未だ眠たそうな飛鬼からそんな返しが来るのが意外だったため、つい聞き返してしまった。
「あぁ、気になることがあると眠れないからな」
「そうっすか」
質問に対しての了承が取れたため、改めて自身の疑問を口にする。
「クランが『禁忌の術』とか『蘇生』とかって言ってたじゃないですか、あれってなんですか?」
「えっとな、この国には『三大禁忌魔法』ってのが存在すんだよ。一つがその『蘇生』死んだ人を蘇らせる魔法、二つ目『殺死』人を強制的に殺す魔法、んで最後が『逆行』時間を逆行される魔法、この三つがいわゆる『三大禁忌魔法』ってやつだ」
初めて聞く『三大禁忌魔法』というものの内容を聞きながら理解するが、どれも中々とんでもないものだ。『蘇生』は亡くなった人を蘇らせることが出来る一見良い魔法だがそれはこの世の常識に反する魔法、『殺死』はどんな相手でも魔法一つで殺すことが出来る理不尽な魔法、『逆行』に至ってはそのどれよりもヤバいと思われる。ダメージも何もかもを受ける前に戻せるし、他の禁忌魔法も使う前に無効化出来る魔法。
そんなものがこの世界に存在するってだけで恐ろしい。
「あ、でもこれのどれも伝説として残っているだけで使われたっていう記録は無い。だから実際に使うとしたら相当、大変だろうな」
「大変というと?」
「ん?そりゃあ、そんな何の属性かもわからない魔法じゃ一から魔法を構築するにしても並みの苦労じゃないし、まずそんな禁忌とか言われる特大魔法、魔力以外の『代償』が必要だろうしな」
「代償ってのは例えばどんな?」
「例えばか、人の身体の一部とか命とかだな」
禁忌に代償が必要となれば確かに簡単には使用できないかもしれない。
「そんなデカイ代償なら使うのも躊躇われますね」
「……」
俺の言葉に飛鬼は無言だった。
「あ、今めっちゃ寝てたわ。夢見たわ夢」
ハッとしたように飛鬼はそう言った。
そこに今までの重い話はどこかに飛んで行き、楽しいお泊まり感が生まれた。
「ヤバいマサキ。俺もう……」
「はい。おやすみなさい」
そう言ってすぐに飛鬼は寝息を立てた。




