第6章 16「世界の禁忌」
「やっぱし心当たりはないの?」
「すまないがな……」
予想はしていたが、それでも少し安心した。
「確かこの剣って使用者が限られてるんですよね?」
そう言うクランは俺のサドルカの剣を指差してドゥラルートに問いた。
「あぁ、その通りだ」
「じゃあ今までこの剣使えた人間って何人くらいいるんですか?」
ドゥラルートが指をパチンと鳴らすとエルルートは駆け足で本棚に寄り、分厚い本を一冊ドゥラルートの元へ持っていった。
「はい、父さん」
「ここでは族長と呼びなさい」
そんなやりとりの後、ドゥラルートは分厚い本を俺たちに見せつけて言った。
「これだけいる」
目測だけで十センチはあるだろう本の見開きページを一箇所見せてもらうとそこにはびっしりと名前が書かれていた。
「結構いるのね」
自分で呟いていて悲しくなる。
なんか、選ばれし者的な存在だと勝手に思っていた自分が恥ずかしい。
「そうでもない。これらは黒エルフの歴史が長いからこそできることだ。それにこの中に書かれている名は黒エルフだけじゃないしな」
そう言って最後のページのところの下から三つには『エルレ=クセルトス』『ルーナ・ルルート』『マサキ』の名があった。
「あ、俺の名前もある」
「そりゃあ一応サドルカの剣の後継者だからな」
『後継者』という単語をかっこよく感じ、少し誇らしくなる。
「サドルカの剣の所有者は百年に一人いれば良い方なんだが」
後頭部を掻きながら、何か困ったと言いたげにそう言った。
「なぜだかわからんが、五十年しない内に三人もの所有者がいる。これは喜ぶべきことでも、悲しむことでもないんだが、そんなにいるなら……一度くらい握ってみたかった」
ドゥラルートの言葉には少し、後悔のようなものを感じられる。
だが、ここで簡単に貸せるほどこのサドルカの剣は使い勝手のいいものではない。闇の力というのが足りない場合は闇の力に身体を飲み込まれ、影の獣化してしまうらしい。
「あの……」
急に発言を始めたのはまたもクランだ。
「失礼を承知で聞くんですけど」
「なんだ?」
畏まったクランは何と言うか少し、考えるともう一度口を開いた。
「禁忌の術……」
その言葉にドゥラルートはピクリと動いた。
「クランさん。それは……」
ユニアが何か口を挟もうとするがクランが続きを言うのが早かった。
「『蘇生』を黒エルフだったら出来るなんてことないですよね?」
禁忌の術?蘇生?また俺の知らないこの世界の常識に俺は頭がついていかない。
「なるほど、だから歴代のサドルカの後継者ってことか。だが、ありえんな」
ドゥラルートのはっきりとした否定にクランは納得する。
そこで俺はある一人の証言を思い出した。シャグルー事件の最中、捕まえた一人の青年。
「じゃあさ、触るだけでシャグルー化出来る人は?」
俺の発言にその場にいる全員の頭上にハテナマークが浮かんだ。
「どういう?」
全員のハテナを代表してユニアが聞いてきた。
「なんか『黒ローブ』に握手されただけでシャグルー化した人が居たんだよ」
「「「「は?」」」」
俺の言葉は誰も信じてくれなかった。




