第6章 12「国の法」
「ユニアと何話してたの?」
俺の素朴な質問に答えたのは帰ってきたばかりのニーナ。
「女の子同士のトークを詮索するなんて無粋ですよ」
そんな青い作業着に黒い油汚れが付いた女の子を見て何の話をしていたのか一層興味が湧いたが、いくら聞いても教えてくれる気はしないのでクランと元の会話に戻る。
「で、クランは黒エルフがどこに住んでるのか知ってるの?」
「いえ、私はあんまり詳しくないです」
すると作業着娘と話していたユニアも食堂に戻ってきた。
「なんの話をしてたんです?」
「ん?ドゥラルートに会いに行こうと思って」
「え?」
ユニアは豆鉄砲を食らった鳩のように一瞬硬直した。
「危険です」
「なんで?」
俺の疑問にユニアはまた一瞬硬直した。が、ユニアの硬直が解ける前にクランが口を開いた。
「そりゃあ、まだ黒エルフが今回の犯人じゃないって決まったわけではないですからね」
「なるほど」
そう言われれば納得せざる終えない。
今回の件で一番犯人と思われるのが黒エルフの誰かだ。そんなところに身を興じるのは確かに危険と言えるだろう。
「でも行かないとドゥラルートが犯人かどうかなんてわからないしな……」
ユニアをチラッと見るがユニアの意思は依然変わっていなさそうだ。
荒く鼻息を鳴らしながら背もたれに寄っかかる。
「ユニアはドゥラルートがどこにいるのか知ってるの?」
「え?知ってま、すね……一応」
ユニアは不自然に会話の速度を落とした。
「へぇ」
そう聞き、すぐにクランに顔を近づけた。
「ねぇ、この国の法でさ魔王の意思は絶対みたいなの無いの?」
耳元で囁くとクランからはすぐに返答が返ってきた。
「ありますよ、確か国法第十八条の国王命令権」
国王命令権とは、なんとも民主主義から批判をくらいそうな名前だな。
そう思いながらユニアの方へ向き直り、笑顔を作る。
「な、なんですか?」
「ユニア」
「だから、なんですか?」
「国法第十八条」
「っう!」
そう言うとユニアは一瞬何かの衝撃を食らったように後ろへ退いたが、すぐにため息を吐いて座り直した。
「わかりましたよ……」
俺とクランが笑顔でハイタッチを交わす姿を見ているユニアの表情は前世界で悪ガキのイタズラを見かけたおばさんのそれにそっくりだ。
「ただし、条件があります」
「なに?」
「絶対に自分の身を危険に晒さないでくださいね」
そう言われて少しドキッとした。
「うん。わかったよ」
俺とユニアが数秒見つめ合うと横から挙手する腕が見えた。
「はい、ニーナ」
俺が学校の先生のように名前を呼ぶと椅子から立ち上がって発言した。
「私もそれについて行ってもいいですか?」
予想外の発言に一同はフリーズした。




