第6章 8「夜回りお疲れ様です」
影の獣が現れた夜が明け、朝になった。
一応散歩がてら朝まで見回りしていたが、先ほど現れた一体以外はどこにも発生していない。
あの一体だけが特殊だった?
いや、そんなことは考えづらい。でも今サドルカの剣は俺の手元にあるため、影の獣を作ることは不可能なハズなのだ。それにこの剣を握れる人自体今は俺と今は亡きドゥラルートの娘ルーナのみだ。
でも、影の獣が自然発生なんて……
そういえば、今日はなんか黒ローブの人に声を……かけら……れた……っけ?
「っあ!」
朝日に照らされた街にはまだ人はあまりいない。そんな中、ある一つのことを思い出した。
前影の獣事件のとき、ルーナの特徴といえば『黒ローブ』だった。そうなれば今回の犯人もルーナ……な、わけないか……
「あぁ!もうクソ‼︎」
ルーナは俺がこの手で……
頭をぶんぶん振って思考を元に戻す。
『前黒ローブ』のルーナと『現黒ローブ』の人は別人と考えていいだろう。だが、この世界は魔法が存在するファンタジーワールドだ。俺の世界の常識が常に通用するわけではない。
もし、万が一くらいには『蘇生』『復活』などといった、それこそ人知を超えた禁忌の術なんかが存在しているかもしれない。
いくら思考を巡らせても答えは出てこない。黒ローブについての情報が少なすぎるのだ。
「はぁ」
「一体朝まで何をしていたのですか?」
「っうわ!」
そこにいたのは昨日とまったく変わらぬ格好でこちらを赤色の瞳で見つめる少女ユニア。
「おはざーす」
俺の適当なあいさつにユニアは表情を険しくした。
「でも、どうしてここが?」
するとユニアは左手につけた腕時計、ママ二号を指差した。
「この腕時計、マサキ様の現在地を表示するみたいなんですよ」
自分の身体にGPSでも埋め込まれているのか不安になって身体をペタペタ触ってみるが、まったくわからない。
「なーるほど」
「で、何してたんです?」
そこで一瞬どう答えるべきか悩んだが、ミッダが牢獄に影の獣をぶち込んだことを思い出すとユニアはもう知ってると考えた方がいいだろう。
「なんかまたシャグルーが出たから見回りしてた」
するとユニアは納得するかのように優しく笑った。
「そうですか、そんなことだとは思ってましたけど」
納得……というより安堵に近いのだろうか?
「一応位置だけはわかっていたので変なとこに行っていないのは知ってたのですが……」
ユニアは手を少しモジモジさせながら言った。
「心配なので今度からは私に一声かけてください……」
心配をかけてしまったことに今更気がついた。
「ごめんね、ユニア。次からはそうするよ」
そう言うとユニアは表情を少し明るくした。
「これからどうします?まだ見回りしますか?」
そう言われ、辺りを見回すともう人々が活動を開始していることに気がつく。
「寝てないから一回寝よっかな」
「私も寝てないのでそうしたいです」
言葉にした瞬間、急に身体が重くなった気がして急いで城に戻った。




