第6章 7「背中の悪寒」
「ふぅ、怪我はない?」
男は振り返ってそう言った。
「え、えぇまぁ」
シャグルー相手にキレイなバックドロップを決めた男は俺に顔を急接近させた。
「っひ!」
何か本能的な恐怖を感じ、顔を後ろに下げる。
「んもぅ、釣れないわねぇ」
この話口調、この男十中八九オカマ、ニューハーフ、オネエ……一体どの呼び方が正しいんだろう。
「んね、魔王ちゃん。このケダモノがこないだのシャグルーってやつなの?」
俺のことをしっかり魔王とわかっているらしい、俺の顔も広くなったものだ。
「えぇ、そうですね」
「あら、敬語なんて可愛いわね。キスしたくなっちゃう」
背筋が凍るのを感じながら口元を押さえると、後ろからポンと背中を叩かれた。
「おう、チビ無事か?」
そこにいたのは筋骨隆々な大男、ミッダだ。
「一応」
「ミッダさんじゃない、お・ひ・さ♡」
そう言われるミッダの顔を見ると表情が引きつっている。
「もう一度聞くぞ、チビ無事か?」
「本当にギリギリでしたけど無事です」
二人揃って危機を感じながら男と距離を取る。
「とりあえずあの影だったやつは一応牢獄に入れとく、無関係であれば解放する。それでいいな?」
「はい」
俺が了承するとミッダは後ろにいた自身の部下と思われる軍人に影だった男を連行させた。
「で、ミッダさん。この人誰なんですか?」
俺がミッダに耳打ちすると、なんとも嫌そうな顔をしながら答えた。
「あいつはザクトの軍本部の人間で名前はオルドリック・カールマン……みんな長いから『オカマ』って呼んでる」
オカマって呼ばれているのか……
この世界にもオカマでそのような人を指すのかはわからないけど何か納得しながらミッダの話の続きを聞く。
「ついでに、軍に入ったのは彼氏が欲しかったから。あいつのせいで本部の新人の半分くらいがトラウマを植え付けられるそうだ……」
何でトラウマなど植え付けられたのだろう……
「それでもあいつが解雇にならないのはシンプルにあの野郎が強いからで……」
「野郎とは失礼しちゃうわね」
「「っひ!」」
いつの間にか俺とミッダの間に顔を挟んでいたオルドリック・カールマン……改めオカマを見ると俺とミッダは同時に後ろに飛んだ。
「一体何しにきやがったこの野郎‼︎」
ミッダの怒声にオカマは腰に手を当てて言った。
「そうそう、私今日からあなたのとこの『魔王親衛隊』配属になったのよ」
魔王親衛隊?それがミッダの属する部隊の名前だろうか。
「ふ、ふざけんな!んなの俺が絶対に認めねぇ‼︎」
「これから一つ屋根の下、一緒に頑張りましょ♡」
ミッダはブルっと一度震える後方へ走り出した。
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇ‼︎」
「あぁん、まってぇ」
そう言って追いかけようとするオカマは最後に
「あ、魔王ちゃん。ま・た・ね、ッチュ」
こちらに投げキッスをした瞬間、俺の身体もブルっと震えた。




