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第1章 20「意地と根性」

 剣を構え、ミルドの方を向く。

 今のところ一方的にやられているだけだ。

「…はぁ」

 溜息を吐きこれからのことを考える。

 相手は余裕ある表情でこちらに歩いて来る。

「行くか‼︎」

 その言葉と共に剣を加速させる。

 剣の狙いを相手からずらし、突っ込んで行く。

 壁にぶつかりそうになる寸前に剣の側面から炎を出し、方向を変える。

 リザードマン戦の時の『相手を翻弄してから蹴る』作戦だ。

 相手に対してこの行動を繰り返した。

 しかし、何回繰り返そうとミルドは最初向いていた方向から変わらない。それどころか目を瞑っている。

「っよ‼︎」

 相手の背後をとり、蹴りに行く。

 相手に蹴りが決まると思った。その瞬間また、地面から出てきた木に邪魔をされた。

 今度は掌の形をしている。

 その掌に勢いよく蹴りを決めてしまったため、足に鈍い痛みが走る。

 前の世界の物理のことを思い出す。

 作用反作用の法則により今、俺の足には自分の蹴りと同じ威力の衝撃が入ったことになる。

 つまり今まで散々、人を気絶させてきた殺人キックをこの弱々しい細い足で受けたという事だ。

 恐らくそれなりのダメージが入っているに違いない。

 剣が掌に突き刺さっている状態でそんなことを考える。

 指と指の間から見える相手を見ると相手はもう攻撃の準備として剣を構えている。

 マズイと思い、また剣で離脱する。

 剣を杖に使い着地するとやはり蹴りを入れた右足が痛む。

 内側の方からジンジン響く痛みだ。

「ヤッバイ…」

 足のことも含め、勝ちのイメージが見えない。

 一番自信のあった『相手を翻弄してから蹴る』という作戦も自滅に終わり、自信を喪失した。

 これ以上負傷を重ねる前に白旗を上げるのが正解なのかもしれない。

 しかし、俺の覚悟がグラグラ揺れているなか、ある一人の少女の発言が脳裏をチラチラする。『魔王は最強でないといけない』ユニアの言葉だ。

「あーあ…」

 今倒れたらどんな楽だろう…

 しかし、女の子を悲しませるなんて…そんなことできない。そう思う男前な自分のせいで白旗は焼き払われた。

 右足を少し浮かせながら立ち上がり、剣を構える。

「へぇ、まだ立つんだ…」

 ミルドが驚きの表情でそう言う。

「こっちも意地とか根性くらいはございますもんで…」

 痛む右足を歯を食いしばって我慢し、また剣を構える。

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