第6章 4「犠牲の数」
「どこ行くんです?」
立ち上がった俺を見てクランがそんなことを口にする。
「ん?墓参り」
俺はクランを連れて外に出た。
これは元々、一人で行く予定だったのだが……まぁ大人数の方が賑やかでいいだろう。
花屋で花束を二つ購入したあと、この町のはずれにある墓地へ向かった。
今回の戦争では死者がわかってるだけで三百七十五人、行方不明者が八百二十二人。合計すれば千人以上の死者、被害者を出した。いずれも大半は軍人であり、少なからず一般人からも死者を出してしまった。
まず俺が立ち止まったのは巨大な墓石の目の前、そこには身元不明の死体が埋められている。
それの前に花束を置き、しゃがんで両手を合わせる。横ではクランも俺と同じように両手を合わせている。
本当にごめんなさい……あなた方の分まで俺は必死に生きます。
心の中でそう呟き、たっぷり二十秒ほど手を合わせたあと立ち上がった。
「よし、次行こうか」
次に向かったのは一人用の小さな墓、テニーのモノだ。
テニーは亡くなってすぐに家族が死体を引き取りに来たらしい。そして、この墓石の下で今は静かに眠っている。
「テニーさん」
横にいるクランがボソッと呟く。
俺は花を墓の前に置き、座り込んだ。
彼女が死んだことは今でもまだ信じられない。また朝になったら彼女が俺の布団の中に潜ってるんじゃないかと思ってしまう。
墓石を見つめながらクランとの会話を思い出す。
「お前の人生は……幸せだったか?」
そんな質問を口にしていた。
「俺なんかのために……本当にごめんね」
テニーは俺を庇って死んだ。
テニーが死んだのは俺のせいだ。
「ごめん……本当に……本当にごめんね……」
そう言いながら俺の目から涙が零れ落ちた。
近しい人間を失うことがこれだけ辛いことだって俺は知らなかった。
前世界の人たちは俺が死んだ時、悲しんでくれたのかな……
「大丈夫ですよマーさん」
クランは俺の背中を叩きながらそう言った。
「だってテニーさんはいつも笑ってたじゃないですか、きっと幸せだったと思います。それにテニーさんからしたらそれほどマーさんが守りたい存在だったんですよ」
クランは恐らくユニアからテニーの死因を聞いている。俺を庇って死んだことを……
「どうか安らかに……俺は絶対に忘れないからねテニー……」
俺はそう言って両手を合わせてテニーへ心の中で話しかけていると、後ろからバサッという音が聞こえた。
振り返ってみるとそこにいたのは花束を落とした二人とも白髪混じりの老夫婦。
「ま、魔王……様」
男は俺にそう言うと時間が止まったかのように動かなかった。




