第1章 19「勝機の見えない闘い」
正午になり決勝戦の開始時間になった。
身体の震えが止まらない…
弱々しく歩きながら闘いの舞台へ向かった。
「…うぅ」
お腹が痛い。
おそらく緊張からだろう…
舞台に着くと周りの声援がすごい。
全方向から大きな声が沸いている。
「やぁ、魔王様…今日はよろしくね」
そう言って珍しく初対面から煽ってこない青少年は顔が白い、心配になるほど真っ白だ。
「よろしくお願いします。あなたがミルドさんですか?」
「うん…そうだよ」
あまり強いという印象は持てない。
今まで闘った相手の方がゴツくて強く見えた。
彼は特に鎧などは着ておらず、ゆったりとした服装をしている。
「まぁ時間だし…そろそろ始めようか」
「そうですね」
俺は剣を出し、剣の柄の部分を握った。
それに比べて相手は何を構えることもせず、そのまま立っている。
「じゃあ…行くよ」
相手はそう言うと手をスッと上に挙げた。
その行動の後、急に顎に衝撃が走った。
視界が歪み、脳がグラングランする。
思わず地面に膝をついた。
「まだ起きてるよね…?」
そう言ってミルドは近づいて来る。
マズイと思い握っていた剣で離脱する。
そしてようやく自分の顎を殴った正体を見た。
それは拳のような形をした大きな木だ。
地面から飛び出している。
頭の中が段々と落ち着いてきたため、攻撃に転じようとする。
側面から出る炎で方向を定め、相手に剣を向ける。
突っ込む‼︎
そう考え、剣を加速させる。
相手の木の拳は未ださっき殴った地点にある。
ミルドに突っ込み、蹴りを入れようと足を出す。
相手は木の枝をバッドのようにスイングし狙ってきた。
持っている状況なら全然届かなそうな木の枝はスイングしてるうちにグングン長くなり、打ちつけてきた。
「うっそ⁉︎」
相手の予想外の攻撃に回避が追いつかない。
思い切り地面に打ち付けられた。
「ぐは…」
身体中が痛い。
「まだ意識あるの?…タフだね」
「そりゃ…どうも…」
憎まれ口を叩くのが精一杯だ。
フラフラながら立ち上がり、未だ勝機の見えない闘いに挑むため立ち上がった。