第5章 45「貴方はいつでも」
「全……滅?」
耳を塞いでいた手を離すと飛鬼がそんなことを言ったのが聞こえた。
全滅?戦争が終わったってこと?
瓦礫から周りを見ると広い更地に獣が一匹……いや一人。
「あ……あぁ……」
戻らない……マサキが元に戻らない……
「やるしかねぇか」
ミッダは腰から剣を抜こうとし身体にビリビリと電気が走っている。
「前はダメージ与えまくったらどうにかなりましたもんね」
そう言って飛鬼も腰から刀……『嵐』の神剣を抜いた。
「ま、待ってください!」
私の出した声に三人の視線が集まる。
「あ、あの……まだ何か……」
「ねぇよ。何もな……」
三人は剣を構えると獣化したマサキを見た。
「俺が真正面から斬りかかる。お前らは左右に分かれて攻撃しろ」
「「了解」」
私の言葉など聞かずに三人の中で話がどんどん進んでいく。
確かに何もないのはわかる。アレはマサキであってマサキじゃない。
獣化したら自我が無くなる。そんなの前の戦いでも見たはずなのに……
まだ、マサキに対して剣を向けることに少し恐れを覚えた自分がいる。
彼は自らの命を落とすために剣を心臓に突き刺したのだ。そんな彼に剣を向けたくない。
すると何を考えたわけでも無く私は瓦礫の陰から出た。
「お、おい!」
後ろから誰かの止める声がする。
トボトボ更地を歩いていると獣化したマサキが私に気がついたようで猛スピードで突進してくる。
「「「ユニア!」」」
三人の叫び声が聞こえる。
次の瞬間、私の額には獣の爪が当たられていた。
「っふふ」
獣は私の目の前で時が止まったように静止している。
その光景に思わず安堵して笑ってしまった。
やはり、獣になってもマサキはマサキだ。
私はマサキの胸に刺さったままのサドルカの剣に手をかけた。
「あなたが苦しんでいるなら話してください……」
マサキは自ら命を絶つほど苦しんでいたのだろう……
「ちゃんと相談してください……」
人に話すこともできず、一人で泣いていたのだろう……
「私を頼ってください……」
誰にも頼らずこの戦争を終わらせようとしたのだろう……
「私はどんな貴方も受け入れます……」
そしてゆっくりと剣を抜き始めた。
「ぐ、ぐおおぉ」
耐えるようにそんな唸りを上げ始める。しかし、抵抗するようには見えない。
「だから帰ってきてください……弱くて優しいいつもの貴方に……」
一気にマサキの心臓に刺さったサドルカの剣を引き抜いた。
すると獣の影はスルスルと天に消え去り、マサキは私の胸に倒れこんで目を薄く開けた。
「ユニア……なんで泣いてるの?」
「え?」
気づかぬうちに私は涙を流していた。
「何かあるなら話してね……俺はいつでもユニアの味方だよ……」
そう言って彼は目を閉じた。
「はい。私も……貴方の味方です……」
私は人に戻った彼がまた獣にならないように祈りながらキツく抱きしめた。




