第5章 40「咆哮を」
マサキの先ほどの返事を不審に思い、私は戦場を走るマサキを愛竜ホプスの背中で見守ることにした。
どうも胸騒ぎがした。まるでマサキはもう戻ってこないようなそんな予感。
私の心配をよそにマサキは敵陣へとどんどん踏み込んでいく。そして海辺に停泊する戦艦の前で止まった。
マサキは誰かと会話してるように見えたがその内容までは聞こえなかった。
そして次の瞬間、マサキは自身の胸を剣で突き刺した。
「マサキ様ぁぁ!」
私の叫び声も虚しく、サドルカの剣と思われるそれはマサキの背中を貫いた。
「あぁ……そんな……」
やはり止めるべきだった。
「うぅ……っう……」
泣いていても変わらない。そうマサキに言ったはずなのに自らは顔を覆い、涙を流した。
涙を拭い、今すぐにでもマサキを救出すべく降下しようとするが何か様子がおかしい。
胸を貫いたマサキは未だ膝をつくことなく立っている。
唖然とする私にさらなる驚愕が襲った。
マサキにトドメを刺そうとした狂戦士の剣を片手で受け止めたのだ。
腕は黒く、五指からは長い黒い爪が生えている。
これではまるで『影の獣』だ。
「うがぁぁぁお‼︎」
マサキの咆哮に空気がビリビリと震えたのを感じた。
そのまま体制を低くし、狂戦士を攻撃し始めたマサキは自らの爪で引き裂いた。
引き裂かれた狂戦士は身体を修復することなく、消滅していった。
あの狂戦士をああも易々と……
通常十数回の『死』をもって倒される狂戦士は跡形もなく消えていった。
マサキの裂いた何かに引き込まれたのだ。
そういえば庭園で素振りをしたときも何か黒い亀裂みたいなのが発生していた。
あれが吸引力を持っていたようにマサキの爪で裂かれたところにも亀裂が発生しているようだ。でも、この間みたいにアルムスの剣を当てないと消滅しないというわけではないらしい。
亀裂は狂戦士を引き込むとすぐ小さくなり、姿を消した。
「ぐおおおおぉぉぉ!」
男の子にしては声のトーンが高かったマサキからは想像もできない『獣』のような声を威嚇するように上げるが狂戦士は恐れもせず突っ込んでくる。
ここが狂戦士の一番怖いところだ。
彼らは『恐怖心』を持っていない。
それが戦争においてどれだけ恐ろしいことか……
数の差であっという間に囲まれ、マサキは黒の大剣を出現させた。
あの剣もいつもと様子が少し違う。
なんというか……いつもの様に黒光りする黒ではない。
もっとこう深いというか、暗いというか、黒のオーラに侵食されたようなそんなイメージを抱かせる。
それを右手で握ると、
「ぐあああぁぁぉ!」
もう一度咆哮した。




