第5章 39「心の中に闇の神」
刀身は未だ俺の身体に突き刺さり、離れない。
もう死を待つのみ……の、はずなのだが、中々その瞬間が訪れない。
息苦しさや、痛みのみでまるで死ぬ気がしない。
そんな俺を不審に思った白衣男が声を上げる。
「おい!まだ生きてんだろ?」
もちろん返事をする元気などとうにないし、あったとしてもそんなことはしないだろう。
「ッチ、トドメを刺せ」
恐らく狂戦士の一体にそう命じたのだろう。
地響きのような足音が近づいてくるのがわかる。
あぁ……なんだろう……
何かがおかしい。
俺の身体に何か異変が起こっている。
しかも、これに近いものを俺は知っている気がする。
血が失われる代わりに何か別の冷たくてドロドロした何かが血管を回っているのを感じる。
……あ、そうだ。
何かその正体に気づけたような気がした瞬間、俺の視覚情報、聴覚情報が完全に遮断され、先ほどの地響きも戦争の爆発音も何も聞こえない。
『また、来たのか』
何も見えない真っ暗な空間の中で確かに人の存在を感じる。
『お前は私を使う度に自分を失っていることに気づいているか?』
私?誰だ?真っ暗で何も見えない。
「お前は一体誰なんだ?」
『私か……私はサドルカだよ』
それを境に俺は再び現実へと戻された。
「っは!あ……お……」
目は見え、耳も聞こえる。のに、身体も口も言うことを聞かない。
「あれ?お前身体の形変じゃない?まぁいっか」
狂戦士の攻撃……やっとこの痛みと苦しみから解放されるのか……
そんな俺の思いとは裏腹に左手は狂戦士の剣を受け止めた。
「え?」
は?
どういうことだ?俺はガードしようとしていないし、剣を持っていたわけでもない。
原因はなんだ?
そう考えている間にも俺の身体は無意識に狂戦士の攻撃をガードし続けている。
「ぐぉぉぉ……」
今の俺の声か?
そんな『獣』みたいなそんな声……
「ううぅぅぅ……」
唸るような声で目の前の狂戦士を威嚇している。
頭が徐々にぼーっとしてくる。
マズイ……また意識が……
自らの意思と関係なく動き続ける身体に混乱しつつ、最後の瞬間まで目を開けていようと努力し続ける。
だが、そんな努力もむなしく聴覚も視覚もどんどん暗くなっていっているのがわかる。
剣をガードする手を見ると黒いオーラが腕を覆い、五指は長い爪のようなものを生やしている。
自分の身体とは思えない。
黒いオーラ……原因は『サドルカの剣』ということだろうか?
ダメだ……もうちょっとだけ……
そう思っても俺の視界はもう真っ暗になり、気づかぬうちに耳は聞こえなくなり、意識は遠のいていた。




