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第5章 38「国の命運と俺の命」

「確かに、君の命と引き換えなら僕たちも手を引こう」

 白衣男は俺からの申し出を割とすんなり受け入れた。

「そっか、話が早くて助かるよ」

 そう言って俺は腰につけたサドルカの剣を抜いた。

 闇のオーラは持ち手からゆっくり俺の手をひんやりと包み込む。

「ふぅ……ふぅ……」

 自分から言いだしたことだが『それ』を目の前にすると急に恐怖心が湧いて来た。

 剣の柄を右手で持ち、刃先を胸に当てる。

 チクっと刺さった部分から血が流れてシャツが染まり始める。

「まぁだぁ?」

 煽るような物言いをしながら俺を見る。

「うっさい……こっちにも、タイミングってのがあるんだよ……」

 心臓の鼓動が早くなるのを感じる。

 まるで自分が生きているという事実を訴えかけるかようなそれを聞いていると本当に自分の決断が正しいのか不安になる。

 大丈夫……魔王なら、また適任が見つかるさ。俺よりもっと強くてもっと賢い人間が。

 ユニアは……ごめん。

 きっと辛い思いをさせる。

 でも、これ以上は戦争を長引かせたくないんだ……俺のことなど忘れてくれ。

「ふぅ……ふん!」

 意を決して高鳴る鼓動にトドメを刺す。

「うがぁ……‼︎ゔぁぉがぁ……」

 心臓を貫いた冷たい剣は背中を貫いた。

 心臓は未だ活動を続け、剣が作り出した穴から血が流れ出ていく。

「はぁ……はぁ……」

 苦しい!

 痛い!

 辛い!

 怖い!

「っは!本当に死んだよ!バッカみてぇ‼︎」

 鼻で笑ったから白衣の男はそう言った。

「冥土の土産に良いこと教えてやるよ」

 男は一層楽しそうに俺を上から見下げながら言った。

「確かに君の死によって『この』戦いは完結する。で!も!結局この魔法国家は潰される存在なことに変わりはない!」

 男はしゃがんで俺の顔を覗き込んで言った。

「つまり、君の死はこの国を守るには至らないってこと!バッカだねー‼︎あーっはっはっは……」

 最後に笑い声を上げながら男は立ち去った。

「あぁ……」

 苦しい……

 流れ出る血の喪失感……

 薄れゆく感覚……

 未だ伸縮し続ける心臓が逐一刃を刺激する。

 刃が痛くて……刀身が冷たくて……

「うぉえぇぇ……」

 先ほど食べたものを吐瀉物として地面にぶちまける。

「はぁはぁ……」

 辛い……早く死にたい……楽になりたい……誰か……誰か俺を殺してくれ。

 自分の身に死が近づいてくるのがわかる。

 テニーもこんなに怖かったのかな……

 ごめんねテニー……

 クラン、飛鬼、ミルド、ミッダ、ニーナ……

 みんなごめんね……俺が強くないばっかりに……迷惑ばっかりかけたね……

 あぁユニア……ごめんね



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