第5章 37「隻腕の魔王」
「はぁ……はぁ……」
城から最前線までただひたすらに走った。
息は切れ、心臓の音はバクバクで、口からはさっき食べたサンドイッチが出てきそうなほど走った。
「着いた……」
久しぶりに動くためのウォーミングアップのつもりだが、もうクタクタだ。
「あれ、マサキ起きたんだね……良かった」
そう言うのは今日もいつも通り顔色の優れない魔族のミルド。
「えぇ、まぁ」
「でも、マサキは僕らとは時間違うけど……?」
ミルドは俺の何も入っていない左袖をチラッと見るが特に驚いた様子はない。
きっともう飛鬼か誰かから聞いたのだろう。
「いえ、違うんです。ちょっとやることあって」
とりあえずミルドに戦争を終わらせられる方法があるということを伝えると大変驚いた。
「へぇ……どうやって?」
「それは言えません」
この方法には一つ問題があるため隠すと
「そっか……」
と、納得してくれた。
「じゃあ僕たちに何か出来ることはないの?」
ミルド達に頼むこと……
「前線を保っておいてください。俺は敵の本拠地に行ってきます」
「わかった。死ぬなよ」
死ぬなよ……か。
「えぇ、勿論です」
そう言って俺は黒の大剣を出した。
戦闘のことを考えると一本持っておきたいな。
黒の大剣を双剣にして一本の上に乗る。
いつも左で持っているためか、右手では違和感がある。
「行ってきます」
敵の本拠地を目指して狂戦士の大群を逆流する。
目の前に立ちはだかる狂戦士は致命傷を負わせるだけで一定時間動かない。
剣を持つ腕や首に足、様々な部位を斬り落としながら進んだ。
後に見えてきたのは大きな軍艦、港に停泊しているように見える。
よく見るとそこから狂戦士が出てきている。
「あれか……」
確信を持ち、叫んだ。
「うおおぉぉ!」
俺の進行を邪魔する狂戦士たちを斬り倒しながら進む。
こいつらは単体で死ぬまで相手するには厄介だが、少し動きを止めるくらいなら別に大した苦労はない。
剣に炎を纏わせれば、彼らの剣も溶かし貫通する。
ラストスパートを華麗に戦い抜き、本拠地と思われる軍艦にたどり着いた。
「ここまで、やってくるのは流石だね」
そこには丸メガネに白衣といういかにも研究者の男。
「これでも一応魔王やってるからね」
驚く白衣男に皮肉交じりにそう言った。
「で?目的は?」
白衣男は俺がここに単独で突入して来た理由を知りたいらしい。
それもそうだ。敵の布陣に大将が護衛を連れずにやって来たのだ。
「俺と交渉しない?」
「交渉?僕はこの戦争から手を引く気は無いんだけど」
そう言って右手を上げると、周りに狂戦士が集まり始めた。
「まぁ最後まで聞けって」
ここからが本題だ。
「お前らの目的は俺だろ……俺の命と引き換えにこの戦争を終わらせたい」
そう言うと白衣男は
「ほぉ……」
と、不敵に笑った。




