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第5章 34「国のために」

 マサキが前線を離れてから三日が経った。

 ユニア曰く、ショボくれてロクに飯も食べていないとのこと。

 狂戦士を一人で相手できる神剣使いのマサキが離脱したことは戦況に大きな影響を与えた。

 未だ壊滅には至らないものの徐々に押されつつある。

『早く前線に戻れ!』と、強い口調で言いたいが、周りにいる有象無象の他人でなく、大切な『友人』を失うことに関しては自分にも経験があるためその悲しみや喪失感も知っている。

 それが故に何も言えない。

「マサキはいつになったら戻りますかね?」

 ふと、背中合わせになったミッダに問いかける。

「知らねーよ。戦いたくない奴を戦わせるほどこの国は鬼じゃねえよ……鬼はいるけどな」

 そう言うとミッダはまた駆け出した。

「まぁ、そうですね」

 そして僕も

また駆け出した。

 このローテーションのときはミッダと僕の二人が前線にいる為、割と押しているように見える。

 まぁそれでも、怪我人は日に日に増えていっている。

 擦り傷みたいな怪我ならともかく、骨折やらなんやらになると軽い術式の魔法では手に負えない為、復帰まで数日かかる。

 いくら数の有利があったにしても、このままではジリ貧になる確率の方が高いように思える。

 第一あの回復能力はもう見慣れたが今回の襲撃の狂戦士の人数がいつもより多いように感じる。

「これは本当にピンチかもね……」

 直感だがそのように考え、つい口から漏らしてしまう。

 相手が本腰入れて潰しにかかってきたのか、はたまた何かの釣り……だったりするのかな?

 考えすぎか……

 思考を停止させ、自分の両手を樹のグローブで覆い戦闘態勢に入る。

『樹』の神剣は誤解されることが多い、この神剣は他のとは形状が違う。

 マサキに聞いたところ曲刀の方を神剣と思っていたらしいが、本当の『樹』の神剣は曲刀ではない。

 両手につけた黒い指ぬきの手袋こそ『樹』の神剣なのだ。

 なぜこのような形状になったのか経緯は不明であり、他の神剣とは違い使用方法に少し癖がある。

 例えば、マサキは炎を剣に纏わせることができる。が、僕にはそれが出来ない。

 彼らの神剣が『剣』なのであれば僕のこれは『鎧』だ。

 自分の身体を樹木で覆い、攻撃力や防御力を上げる。というのが主な使用方法。

 他にも地面から樹木のグーを発生させたりも出来る。

 別名『樹』の神鎧(しんがい)と呼ばれている。

 未だこの剣の力を全ては引き出せてはいないが、それでも今まで鍛え続けてきた戦闘センスや頭脳を使って僕は未だ生き残っている。

 マサキがいない間は僕たちで国を守るんだ。

 魔王がいなければ負けるなんて……そんなの魔王を目指していた者が聞いて呆れる。

「来いよ……僕が相手だ!」

 目の前の大群にそう宣言して樹木の拳で殴りかかった。

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