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第5章 33「怒られたがり」

「そうですか……」

 マサキの発言に私はどう返答すべきか悩んだ。

「怒らないの?」

 怯える子供のようにそんなことを尋ねてくる。

「怒りませんよ、混乱はしてますけど」

 そう言うとマサキは少し落ち込んだように見えた。

「なんで?」

「え?」

「なんで怒らないの?」

 別にマサキが恋人だからとかそう言う理由ではない……はずだ。

 が、いざ聞かれると私にもよくわからない。

「なんででしょうね?」

 するとマサキは肩を竦めた。

 なんとなくわかった気がした。

 マサキがどうして私が怒らないか尋ねた理由が……

「怒られたかったんですね?」

 その言葉にマサキはビクッとした。

 罰して欲しかったのだ。

 自分が犯してしまった罪を……

「自分がしたことに対する罰が欲しかったんですよね?」

 私がそう言うとマサキは少し戸惑ってから頷いた。

「『怒る』という行為は確かに一つの贖罪の形だと思います……でも」

 マサキは未だ何も言わず、私の言葉に耳を傾けている。

「ここで私が『怒る』というのはテニーに対する冒涜じゃないですか?」

「それは……」

「マサキ様は確かにテニーが死ぬ原因を作りました。でも、それを私が罰する権利などありません」

 マサキが何か言いだしたのを遮り続けた。

「テニーは身を呈してマサキ様を守りたいって思ったんだと思いますよ?それでマサキ様を罰するなんてお門違いじゃないですか?」

 マサキは私が重ねた手を避けて頭を抱えた。

「でも……俺がしっかりしていれば……」

 弱々しい口調で反論しようするも、マサキは途中で言葉を詰まらせた。

「いいですか?貴方はこの国の『王』です。『王』のために命をかけるなど『普通』ではないですか?」

「『王』とか……『魔王』とか……」

 私の言ったことが気に食わないのかマサキはさっきより声量を上げて反論してくる。

「そんなのの為に命をかけるなよ!かけないでくれよ!俺はそんな大した人間じゃないんだよ!守られる程立派な人間じゃない!君らが考える『魔王』とは程遠いポンコツなん……」

 ヒートアップして向かい合い、そう言うマサキに私は黙って口づけした。

 マサキは動揺して押し黙った。

「確かにマサキ様はポンコツです。弱くて泣き虫で、世界のことをわかってなくて……でも、優しい人です。私たちからしたら貴方は守るべき『魔王』なんです」

「でも俺は……」

「私はマサキ様もテニーもとても大切に思います。だから……死なないでくれてありがとうございます」

 そして私は立ち上がり、マサキに一礼した後部屋を出た。


 戦況が悪化し始めたのはそれからだった。

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