第5章 32「俺は違う」
俺はアニメの主人公じゃない……
漫画の主人公じゃない……
特撮ヒーローの主人公じゃない……
じゃあ『俺』はなんだ?
俺はただの一般人だ……
凡才にして凡人……魔法も使えなければ、何か特技があるわけでもない……
物語の主人公は『正義は必ず勝つ』と言っている。
世界から見たら俺たちの国は完全なる『悪』にあたるのだろうから、必ず勝てるかは不明だ。
物語の主人公は『怒りを力に変える』と言っている。
今の俺に怒りなどない。あるのは絶望と罪悪感だ。
物語の主人公が言っていることはいつでも理想論だ。
きっと、色々な選択肢の中で偶々生き残れる選択肢を選び続けたのが物語の主人公というモノなのだろう。
彼らの物語に並行世界があるならば、その中には彼らが死ぬ結末も必ず存在したはずた。
「マサキ様……」
部屋の外から声がする。
声の主はわかっている。ユニアだ。
「入りますね」
俺の返事を待たずしてユニアは部屋に入り、俺がうつ伏せで寝転がるベッドに腰をかけた。
「失礼します」
「どうしたの?」
いつもは胸踊るユニアとの会話も今日はどうも乗り気がしない。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫か大丈夫じゃないかだけ言ったら全然大事ょばない」
冗談めかして言ったもののユニアは笑ってくれない。
「私に出来ることなら何でも言ってください!」
そう明るいトーンで話してくるユニアに一つ甘えることにした。
「なぁユニア……」
「なんです?」
「一つ頼みがあるんだ」
その言葉にユニアは驚いたのか一瞬反応が遅れた。
「はい。なんですか?」
いつもの俺の頼みを聞くような感じで俺の言葉を聞こうとする。
「話を聞いてほしいんだ」
「え?」
「ダメ?」
そういうとユニアは戸惑ったような声で言った。
「いえいえ、全然」
「そ、なら良かった」
うつ伏せの状態からユニアの隣へと移る。
「実は……」
言うことは決まっている。
「実はさ……ユニア……」
なのに俺の腹は喉は口はそれを言葉にしようとすることを激しく拒む。
「テニーをさ……」
やっと出た本題の言葉にまた息がつまる。
「殺したのは俺なんだよ‼︎」
意を決して出た言葉は思いの外強い口調となって俺の口から飛び出した。
「え?」
ユニアは少し戸惑っているように感じる。
「俺がボーッとしてたから……そこを狙われて……テニーが俺を庇って……」
自身の罪を自白し目から雫が落ち、声が震える。
「撤退すれば良かったんだよ……テニーが死ぬくらいなら撤退した方が良かった」
なんとなく置いていた右手にユニアはそっと自分の左手を重ねた。
暖かな体温はユニアから手を伝って俺に届いた。




