第5章 31「失う悲しみ」
「おう、ユニア」
マサキの部屋を出て一人で歩いていると後ろから声をかけられ、振り向いた。
「飛鬼さん」
声の主はマサキをここまで連れ帰ってきた鬼、飛鬼だ。
「マサキ、どうだった?」
「今さっき起きたところです」
「そうじゃなくて」
飛鬼が聞きたがっているのはマサキの精神的な現状だと理解する。
「落ち込んでいます……」
「だろうな」
私もテニーという幼少期からの親友を失ったことはとてもショックだ。
だが、仕方ないと割り切っている。
今、私たちがやっているのは戦争だ。
死者など当たり前のように出てくる。
幼少期からの親友にしても、異族の友人にしても、恋人にしても、いつ死んでもおかしくない状況にいるのだ。
「マサキ様は……もう戦えないかもしれません」
今まで多くの人の多くの挫折を目にしてきた。生死に関する挫折、身体に関する挫折、精神に関する挫折、努力に関する挫折……
今日のマサキの表情を見ていると彼がまた剣をとって走る姿が思い浮かべられない。
「大丈夫だろ」
そう言うと飛鬼は苦笑を浮かべた。
「あいつは強いからな……いくら折れてもまた戦わないといけなくなったらきっと剣を持つよ」
確信を持つように自信満々にそう言った飛鬼はまたどこかへ行ってしまった。
また一人になったため庭園へと向かった。
「はあ……」
いつかマサキとともに過ごしたベンチに座り、溜息を吐いた。
今日、飛鬼が顔を青くしてマサキを連れて帰ってきた時は個人的に顔面蒼白となった。
テニーは亡くなり、マサキは左手を失った。
そして、そこの現場を見かけた飛鬼は騒然としたらしい。
なぜならマサキは目の前でテニーが殺され、自身の腕がなくなったショックから涙を流しながら笑い狂っていたそうだ。
飛鬼はこのままではマサキが精神崩壊を起こすと考え、気絶させたと話していた。
「あぁテニー……」
私自身、理解者であったテニーを失ったことはとてもショックだ。
幼かった頃、私をいじめる輩から守ってくれた正義感の強いヒーローだった。
テニーも……マサキが好きだったらしい。
テニーは一体どんな死を迎えたのだろうか?
その瞬間を目撃していなかった飛鬼は何も知らないと言っていた。彼が見ていたのはあくまでマサキが笑い狂い始めてからだったそうだ。
目の前で大切なテニーという存在を失ったマサキが責任を感じないはずがない。
なのに……私は……
自分の軽率な発言を後悔して溜息をつく。
マサキに謝らなければ……そして、また彼が戦えるように一緒に時間を共にしよう。
そう考えてベンチから立ち上がった。




