第5章 27「俺の悩みは……」
城の中を一人でトボトボと歩く。
ユニア達はあのことを知っているのだろうか?
さっき見せられた衝撃的な映像。勇者誕生の瞬間を目の当たりにした俺は少し気分が悪くなったためニーナの研究室をあとにした。
あの一体一体に十数人の命が……
「っう!」
そう考えるとまた口元を抑えてしまう。
一週間ほど経った今、俺は一日に約二十体ほど殺している。
そうすると約……千四百人といったところか……
こりゃあ天国には行けそうにないな……
片膝をつき吐き気が収まるのを待っていると誰か歩いてきた。
「何してるの?」
突き当たりから出てきたのはテニーだった。
「だ、大丈夫⁉︎」
そう聞きながら俺の方に歩み寄り、背中をさすってくれた。
「うん。大丈夫……」
「とりあえずマサちゃんの部屋まで行こ」
そう言われ、テニーとともに俺の自室へ向かった。
俺の自室へ着くととりあえずイスに座らされ、テニーは水を取って来ると言ってコップを持ってどこかへ行った。
「どうしたらいいんだよ……」
額に手を当てこれからのことを考える。
敵の戦力は当初聞いていたのは千体、それまでメンタルや身体がもつかどうか……
いやいや、そんなことじゃない。
今、気にするべきそんなことじゃない……はずなんだ。
今考えるべきは他にあるってわかっているのに目先に見える問題はいかにしてあの狂戦士を追い返すかで頭がいっぱいだ。
千体ならそろそろ尽きてもいいころじゃないか?
それとも『千』という数字が元から間違えていたのか?
相手も戦力を温存していたのかもしれない。
だったら……
俺の思考を強制停止させたのはドアを開ける音だった。
「おまたせマサちゃん」
そう言ってテニーから水が差し出された。
「あ、ありがと」
テニーは俺と対面した席に座り頬杖をついた。
「で、何に悩んでたの?」
「っぶふぅ‼︎」
口に含んでいた水を一気にコップをへ戻してしまった。
「なんで!なんでわかるの?」
「落ち込み方がわかりやすすぎるんだよ」
そんなにか……
「話してみなよ……悩みってのは人に話すと楽になるもんよ」
テニーの厚意に甘え、俺は先ほどニーナに見せてもらった動画のことを話した。
『勇者』という名の狂戦士は多くの人を犠牲にして造られたモノだということを……
「そうなんだ……」
そのことを話すとテニーは少し戸惑ったように目線を泳がせた。
「なんか、どうしたらいいかわからなくなっちゃったんだよ……まるでスクラップを壊すような感覚で今までは勇者を倒してきた……でも、ヒトってわかっちまったら……」
「マサちゃん……」
俺の迷いを打ち明けるとテニーは俺を優しく抱きしめた。




