第5章 26「勇者の誕生」
狂戦士には体力という概念が失われているのだろうか?
そう思えるほどに敵の体力は底知れない。本当に同じ肉体を持つ人間なのか怪しく思えるほどだ。
戦いが始まって経過した日にちは一週間、尽き果てることなく湧き上がる強敵に体力とメンタルが削られていく。
一日に十二時間休憩できると言っても十二時間は働き詰めだ。
そろそろ気持ち的に相当辛い。
現時刻は午後十二時、次の出撃まではあと三時間ほどある。
そこで俺はある一人の女性を訪ねた。
「ニーナいる?」
そこは異国の天才発明家ニーナの研究施設。なぜか知らないが城内の一室は彼女の研究部屋として使われている。
「はい、もちろん居ますとも用件を言ってください」
ニーナに急かされ俺は早速本題に入る。
「単刀直入に聞くとエレクスタルの『勇者』のことだよ」
そう聞くとニーナは少し不思議そうな顔をした。
「『勇者』のどこに疑問を覚えるというんです?」
「体力に身体能力、一番は回復力だよ!あんなののどこが『勇者』だってんだよ‼︎」
俺の知っている勇者はもっとカッコよかって勇敢で剣や魔法を使って戦う人々の憧れのような存在だ。
……あんなの俺が知ってる勇者じゃない。
「だから私は言ったはずです。あんなの科学って呼びたくないと……」
「あいつら一体……?」
すると一度ため息を吐いてから腕時計のような機械を操作し、何も無い空間にホログラムを映し出した。
「これは……」
「ッシ!」
静かにとジェスチャーされ指示に従う。
ニーナが出したの一本の動画だ。
「え?」
内容はとても悍ましく、残酷で、見ていて辛いものがあった。
十数人の人間を一つのエリアに集まるとその人達を板挟みにして押しつぶす。
音声付きのその動画内には生々しい断末魔、骨の砕ける音、命乞いをする人の声、肉が潰れて血が吹き出す全てが記録されていた。
「っうぅぅ……」
この世界に来る前からその全般が苦手な俺はつい口元を手で押さえてしまう。
「何ゲロ吐きそうになってんすか?ここからですよ?」
断末魔が収まるとそれらはドラム缶みたいなものに詰め込まれた。
そのまま変わらない映像を数分見たところでドラム缶は内側からの力によって破壊された。
「え?」
そのドラム缶から出てきたモノこそ俺たちが今対峙する敵『勇者』だった。
「は?どういうことだよ」
「見たらわかりません?彼らは十数人の尊き命を犠牲にして造られる存在なんです」
ニーナの言葉に脳みそが追いつかない。
「彼らの回復力はその人間達の命そのもの、身体能力も然りなんですよ」
そんな恐ろしいものをあんな何千体と……
「何が魔王だよ……」
混乱した脳みその中に疑問が生まれる。
「何が悪魔だよ……」
俺なんかより……
「あいつらの方が悪魔じゃねぇかよ」




