第5章 18「選ばれたモノ」
それから俺は国の軍に所属して人間の町で暮らし始めた。そこでの生活は俺が思っていたほど酷いものではなかった。
俺がいた田舎の村ほど世間に鬼への差別的な態度や偏見は見られない。むしろこっちの方が暮らしやすいと思えるくらいだった。
ミッダとの修行の日々や強敵との戦いは俺にとって幸せな日々だった。
一時期は人間の恋人がいたときもあった。
その頃『嵐』の神剣の所有者だったのはミッダだった。憧れの存在が持つ剣に憧れながら日々の特訓に励んだ。
そして今から数ヶ月前、魔王が突如姿を消した。
神剣の所有者の移行は魔王が変わるのと同時に行われる。
今まで見てきた中で一番強い男、前魔王エルレ=クセルトスという『炎』の神剣の所有者がいなくなると、ミッダの『嵐』の神剣も相応な所有者へ譲渡された。
『炎』の神剣は剣が所有者を選ぶが他の剣はその類ではない。現所有者が次の所有者を選ぶ。
『地』の神剣は魔王が消えるのと同時期に行方不明となり所有者が決められなくなったが『嵐』は俺に『樹』には『炎』に選ばれなかったミルドに渡された。
最初はこの判断に反対するものが多く出てくるが、それを黙らせるためのイベント『闘技会』で神剣使い達は自分達がどれだけその力を引き出せるかを見せつける。
それがこの国の伝統だ。
俺はミッダと違ってまだまだ全然弱い。
ミッダの戦闘スタイルを真似しようと頑張った時期もあったが見よう見まねではまったく上手くいかなかった。
ミッダは『風』属性の派生属性である『雷』の属性を使いこなしている。
その身を電流のが流れるような速度で移動させ、武器や拳に雷を纏わせて麻痺させたり、単に攻撃力を上げるのに使用したりする。
そこでミッダに伝授を頼んだが相手にされず、もっと自分にあった使い方を探せと言われた。
だから俺は魔王がいなくなって次の魔王が見つかるまでの期間、三日程度だったが武者修行の旅に出た。
各地の剣士やら魔獣やら戦士やら魔法使いとひたすらに戦った。自分に合った戦闘スタイルというものを確立するために……
でも無理だった。
現魔王マサキが見つかる?というか現れると俺は修行を取り止め王都へ戻り闘技会に備えた。
いくら頼んでもミッダは『雷』属性の扱い方を教えてくれなかった。
結局今も教えてもらえていない……
『風』属性からどうすれば『雷』属性が発生するのかもわからない。
ミッダという男は魔王の右腕の異名を持つほどの人材だった。
そんな男の継承者がこんなに弱くあっていいはずがない。
俺は強くならなければいけないのだ。




