第5章 14「魔王と勇者」
気づくと無意識に肩から手を離していた。
「お、お前らはなんだ?」
殺気に気圧されたことを隠すように強い口調でそう言うと男は先程までの感じを取り戻して言った。
「何って言うならハンヌから聞いてるでしょ?『ブレイブ』だよ」
ハンヌが俺に伝えたことがバレてる。
釣られたのか?
それとも情報が漏れたのか?
「違う。そういうことを聞いてるんじゃない!」
そう言うと男は首を横に傾けた。
「俺が聞いてるのはあのデカブツのことだ」
「あぁなるほど。あいつらは『勇者』だよ」
ヒーロー?
ほんの数十メートル先では多くの筋肉ダルマ改め『ヒーロー』と戦っている。今すぐ参戦したいのは山々だが、まだこいつから情報を集めるのが先だと自分に言い聞かせる。
「聞き覚えない?『君がいた世界』では『ブレイブ』は『勇気』、『ヒーロー』は『英雄』だとか『勇者』って意味があるはずなんだけど?」
確かに勇気や勇者の英語訳はそんな感じだ……ったような……
ん?
今、『君がいた世界』って
「ちょ、待て!今なんて……」
俺の話を遮るように男の手元の腕時計が鳴った。
どうやら通信機になっているようで短い会話の後にこちらを向いた。
「呼び出しがあったので僕はこの辺で……」
そう言ってまた去ろうとする男は一度振り返り渾身の笑顔の後、
「良いこと教えてあげます。僕らの目的はあくまでこの国の頭です」
そう言った後、自身の丸メガネをクイっと上げて笑顔の後だからこそ一層際立ったように見える冷酷な目で言った。
「君が自害とかして首さえ差し出せばこんな戦争はすぐに終わることをお忘れなく」
その後何か言ったようにも見えたが周りの騒音がそれを掻き消した。
彼は一体……?
俺のいた『世界』のことを知っていた……
どういうことだ?
俺はあの世界で殺されたからこの世界に来たのでは?
『原因』はわからないが彼……いや彼らは俺のことに関する重要な何かを知っている。
そんな予感がする。
考えてるうちにも戦況は変化している。
状況は……こちらが少し押されているか?
何十人単位で勇者に戦いを挑むがそれでも回復能力が高いだけ倒すのに苦労しているように見える。
ハンヌの件に俺の故郷のこと、この世界のこと考えることは山積みだ。
誰かに相談できればいいのだが……
そう考えると思いつく金髪の少女がいるが頭を振って除外する。
まだ俺の世界のことは話せない……きっと話すべきではない。
そう勝手に結論付けずっと剣を握って汗ばんだ左手をズボンで拭う。
考えるのはこのローテーションが終わってからにしよう。
近場の的に狙いをすませ、剣を加速させた。




