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第5章 11「スタート防衛戦」

 何においても準備期間というものはいつの間にか過ぎ去っているものだ。

 学校のテスト然り、文化祭然り、大会然り……

 ハンヌはブレイブが一週間後に来るとだけ伝えていたため何時に来るのかはわからない。

 だから現在、午前零時の時点で軍やら黒エルフやら獣人やらが総動員で今か今かと待機している。

 過去の先人が遺した魔法陣のおかげで侵入ルートは一箇所しかない。それも入ってくれば警報が鳴る。

 準備は万全と身構えていた夜明け前の午前三時、耳の鼓膜を直接叩かれているようなキンキンとした音が鳴る。

「野郎ども!敵がお目見えだ。これを撃退した暁には全員で宴だ!死ぬ気で生きろ!」

 軍の一番偉い人らしいミッダがそう言って活気づけると俺を含めた全員が

「おおおおおお‼︎」

 と、勇ましい雄叫びをあげた。

 そしてなんの作戦も立てないままにブレイブ撃退戦の幕は切って落とされた。

 ニーナからの事前情報だとブレイブは本当に少数精鋭型ということで千人程度ということらしい。対してこちらは十万人だ。

 数の利を活かして唯一作った作戦はローテーション制で戦うということだ。六時間交代で戦い続ける。

 これならば休息を取りながら戦える。相手には常に五十倍ほどの人数差を当てられる。

 これならば本当に撃退できるかもしれない。

 最初のローテーションとなっていた俺は走ってブレイブのいる地まで向かおうとしていると途中で首根っこを引っ張られ息を詰まらす。

「おぇ!」

 誰だよと、後ろを振り向くと作業服姿の金髪の女の子、ニーナがいた。

 ニーナはしゃがんで俺を覗き込むと言った。

「マサキに一つ忠告します。ブレイブに情けをかけることはしない方がいいと思います」

 それだけ言って立ち上がって何処かへ行ってしまった。

 情けをかける?

 俺は今回の戦いも出来るだけ命が落とされることはして欲しくはなかった。ならば当然ブレイブは戦闘不能にして撤収、または拘束を理想としている。

 俺の手はすでに汚れている。

 ルーナという黒エルフの女の子……左手を落としてから心臓を貫き灰にした。

 あの時の俺はどうかしていた。自分が自分でないようだった。

 もう……殺したくない。

 手が震え、息が荒くなり、心臓が高鳴る。

 そのことを思い出すだけでこの有様……しかも俺はあの時……殺すことを……なんの躊躇もなく……

 やめよう。

 後悔は後にしよう。

 今したって仕方のないことだ。

 俺は今、国を守るため、国民を守るため、友人達を守るため……そして、愛する人を守るためにまた剣を握らなければならない。

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