第5章 10「諦める覚悟」
「そうですか……」
ダンジョンボックスの作成が上手くいっていないという現状を知って、ユニアは少し黙った。
「どうしようね……」
なんとなく沈黙に耐えられなくなって自分から会話を始めた。
「ほっ……ときましょう」
少し悩んだユニアの発言に驚いた。
「え?え⁉︎え‼︎ほっとくってユニア!」
「はい」
ユニアは至極冷静だ。
ユニアの言う放っておくというのはつまり……
「この国の人たちを見捨てるってこと?」
道の端でそんな物騒な会話を続ける。
「そうとまでは……」
「でも、そういうことじゃん」
つい感情的になりながらユニアに反論する。
「別に間違いでは無いはずです」
俺に対して自信を持ってユニアはそう言った。
「学校とかでもそうじゃないですか?手をつけられない人は……言うことを聞かない人は放っておく。それが一般的なんじゃないんですか?」
確かに過去、学校というところに通っていた経験上、学校にはそういった面がある。でも、あれに命はかかっていない。
「でもそれじゃあ人が……」
「死ぬかもしれません」
俺の発言に割り込んでユニアはそう言った。
「だったら……」
「私たちはもう仕事はしました。犠牲者が少なくなるようダンジョンボックスの作成を呼びかけました。あとはもう当人たちの問題のはずです」
確かにそうだけど……
「それにこの国全土が戦場になるってわけではないはずです。なら多分大丈夫ですよ」
「でも俺たちが負けたらその人たちが……」
俺がそう言うとユニアは溜息をついてから言った。
「私たちが負けたらどっちにしろこの国は終わりです」
そうか、今この国の最高戦力は俺たちなんだ。
負けたら国滅亡……
勝っても何かが得られるというわけではない。
俺たちにとってなんの利益も生まない不毛な戦いだ。
「そっか……そうだよね……俺たちが負けたらどっちにしても終わりだ」
国の命運を背負っている自覚を持つと胃がもたれるような感覚に襲われた。この緊張に弱い性格は前世界から何一つ変わっていない。
神の剣を持って魔王となってしまったのに……弱点『緊張』はやってられない。
なんとかしてこういうところも直さなければユニアの言う理想の魔王には程遠い。
「よし!命懸けで戦うとしようか!」
決意を決めて両膝をバシッと叩く。
「そうですね」
口ではそう言ったが果たして俺の貧弱な背中でこの国の人たちを背負い切れるか……
不安はある。なんならいっぱいある。
でも今は、見栄を張る。
自分自身に自分が弱くないと言い聞かせるため。
俺ならきっと……いや絶対に出来ると思い込ませるために……




