第4章 49「星空の下のベンチの上」
ユニアはそのまま泣き続けいつの間にか寝息を立てていた。暖かなユニアの右手はしっかりと俺の左手を握っている。
離させるのを忍びなく思ったため少しの間、このままでいようと思う。
身動きが取れないこの状況でふと夜の空を見上げるとそこには満点の星空が広がっていた。
前世界では星空というものはあまり見ることがなかった。町の光が明るすぎて星が見えなくなるそうだ。
こうして夜風に当たりながら星を見るというのは嫌いじゃないかもしれない。
「綺麗だな……」
ふと独り言が出てしまう。それほどまでにこの夜空は素晴らしかった。
なんだかんだでこの世界に来てからここまでじっくりと空を見上げるのは初めてかもしれない。
なんだか不思議な気分だ。
俺は今、前世界にいたときより発展途上の国にいると思う。魔法があると言っても夜は暗いし、指先一つで操作できる不思議な板も口から冷気や暖気を出す便利な箱も何もない。
俺はこの国がもっと発展することを望んでいる。ニーナの存在はそれに大きく貢献してくれるだろう。
しかし、これは正しい判断だったのだろうか?
科学技術の発展というのはいつもどこかで問題を起こすものだと思う。公害にしろ人手不足による重労働にしろ……科学が必ずしもこの国を発展させるとは限らない。
何かを手に入れるということは何かを失うことだと昔何かの本で読んだ。
この場合、失ってしまうのはこの綺麗な夜空かもしれない。
もしかしたら先代の魔王たちが他の国と親交を持たなかったのはそういう理由なのだろうか?
考えすぎか……
夜に一人になると考え事に深く入り込む癖がある。前世界では学校帰りの夜の道を考え事をしながら歩いていた。
「はぁ……」
気持ちを入れ替えるべく一つ溜息を吐き、隣に眠る金髪の少女に目を向ける。
目の周りは泣いていたせいか少し腫れている。顔を赤くして眠るその表情はとても先程まで怒っていたとは思えないほど落ち着いている。
ユニアもきっと色々溜め込んで生きてきたのだろう。自分に対する誹謗中傷や髪の色に対する差別的なイメージ……
この国には獣人やエルフなど多くの種類の人間がいるが、それでも金髪というのは異様なものなのだろう。
差別意識というのはよくない。そんなあやふやなイメージしか今まで持ってこなかったが、こうして身近な人が傷ついているのを見るととても心が痛む。
そんな差別意識の無い世界にしたいな……
決意を新たにして座っていると庭園の入り口付近に一つの人影が見えた。
食事の席でハンヌと意気投合して共に盃を交わしていたミッダだ。
「そこで何して……」
「ッシー!」
人差し指でジェスチャーしながら口でもそう言う。
「すみません静かにしたください。今、ユニアが寝ているんです」




