第4章 34「素が出かける」
ミッダに後頭部を殴られ、気絶して早二日が経ち俺はアルムスの元を後にしようとしていた。
「はぁ……こうも早く帰ってくるとは驚いたぞ」
サドルカはため息ながらそう言った。
「あはは、お世話になりましたー」
「もう戻ってくるなよ」
「はーい」
引きつった笑顔でそう返し、光の扉をくぐる。
目を瞑り、眩しい目の前が暗転するまでそうする。そして、重力の向きが変わるのを感じてからゆっくり目を開く。
「おはようございます。マサキ様」
そう言うのはこの世界に来てからずっと俺の隣にいてくれた金髪の少女。
「おはよう、ユニア」
微笑んできたユニアに合わせて笑ってそう返す。
「この二日間どうだった?」
「特に何も……あ!」
急に何かを思い出したような表情をしたユニアに何があったのか聞いた。
ユニアが言っていたのは魔王こと俺が起床し次第『通告鏡』という連絡具で何か連絡を行うらしい。
「ほう通告鏡ってので何するの?」
とりあえず通告鏡で連絡を行うことは理解したが、一体何を連絡するっていうのだろう?
「あ!」
そいえば一つ思い出した。
「ルナラナのことか」
「そうです」
なるほどと、納得し次に新たな疑問が浮上してくる。
「あのさ……」
「はい?」
通告鏡の説明を聞くと、一つの親鏡に写っている人を多くの子鏡に魔力で映し出すらしい。
するとルナラナのことについて連絡する人間が必要なわけで……
「その連絡って誰が……」
「もちろん。魔王たるマサキ様ですよ」
予想通りの答えでありながら困惑を隠すことができず、苦笑を浮かべる。
聞くに子鏡はこの国の至る所、一家庭に一つくらいあるらしくそんな大量な子鏡に俺が映し出されるなんて……
想像するだけで歯がガタガタし、身体が震えてしまう。
「大丈夫ですか?」
「うん、まぁ……」
前世界の記憶を辿れば、俺は大勢の前に立って話したことなんて一度もない。ましてや一国の国民全員の前で話すなんて……
「まじで本当にしっき……いや、普通に竦むところはある」
あぶねー‼︎
危うく失禁って言いかけたー!
ユニアの前であまり汚い言葉は使わないように心がけている。
つい、前世界での癖で男子高校生『井上正樹』が出かけてしまった。
気をつけなければ……
「まぁ出来る限りがんばるよ」
「はい。応援してます!」
がんばれと、両手を駆使して応援してくるユニアが可愛らしい。
ユニアの応援に応えるためにもしっかりやらなければ!
そう思い、二日ぶりに寝ていたベッドから跳ね起きた。




