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第3章 38「願いごと」

「この剣でなら…」

 シャグルーになってしまった人を元に戻すことができる!

 そう言わんばかりのキラキラした目でマサキは私を見つめていた。

 なんだろう…何か忘れている気がする。

 私の考えなど知る由もなくマサキは大量の光の剣を周りに生み出している。

 その現象は最早神秘とかそういった類のレベルだ。

「おぉ」

 先程まで敵だったドゥラルートもその神秘に呆気にとられている。

「マサキ様、何するつもりですか?」

 私の言葉に目を瞑っていたマサキがこちらを見た。

 ニィッと笑いながら

「オペ」

 と、よくわからない単語を口にした。

 オペ?

 瞬間、光の剣は四方八方に飛んで行った。

「本当に何するつもりですか?」

「ごめん、ちょっと待って」

 マサキは目を瞑りながら手をいろんな方向に動かしている。

「し、信じられない」

 と、呟くドゥラルートを見ると何かしらただならぬことをしているのであろう。

「シャグルーの気配が消えていく…」

 そう言うドゥラルート達エルフの反応でようやく何が起こっているのか理解した。

 今マサキがしているのは町に湧いている大量のシャグルーを人間に戻しているのだ。

 確かに一人一人大量出血覚悟で倒して行くのは骨が折れるし、何より私が使えるのは簡易的な回復魔法のみ、怪我人を簡単に助けられるかと聞かれれば不可能だ。

 数秒間、マサキのシャグルー浄化の姿を見ていると瞑っていた目を開いた。

「大方終わった…」

 息が乱れ、膝に手をつき、とても辛そうに見える。

「大丈夫ですか?」

 思わず声をかけるが、ドゥラルートは私よりマサキの現状を理解しているらしく、軽い考察を話し始めた。

「あの光の剣一本一本に意思が含まれているんだ。あのような量の剣を一気に操作すれば、魔王の脳に入り込む情報量は計り知れない…大丈夫なわけがないだろう」

「だ、大丈夫…ちょっとだけ休んでる」

 いつの間にか周りからエルフ達が消え、三人だけになっていた。

「わかりました。では木陰にでも行きましょう」

 木陰に移り自分の膝の上にマサキの頭を乗っける。いわゆるところの膝枕というやつだ。

 私を…この国を護った男の髪を撫でながら、その男の名前を口にする。

「マサキ様…」

 あなたは確かに性格も力も変わったかもしれない。何人もエルフや人を殺してしまった。

 それでも、あなたは殺した人より何百倍、何千倍という人間を救ったのですね。

 窮地に陥っていた私も、この国の人々も、対立しかけた他の種族も…みんな

 私は…私はあなたが…これが身分的に、人種的に許されないとしても私は…あなたのことが…

「大好きです」

 ふと口にしたその言葉は隣に座っていたドゥラルートにも聞こえていないだろう。

 この気持ちはしまっておかないといけない。あの人は魔王で私の身体には半分この国のものではない血が混ざっている。

 そんな私を彼は愛してくれるだろうか…

 だから、この恋い焦がれた心はしまっておかないといけないのだ。

 諦めきれるまで、そうしておかないといけない。

 そう…叶うはずのない…届くはずのない気持ちなのだから…


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