第3章 37「影から人へ」
「ユニア、お待たせ」
縛られた状態で身体を好き勝手に弄られた少女は涙ぐんだ目でこちらを見つめてくる。
「ま、マシャキさま…」
光の剣で縄を斬ると即座に俺に抱きつき、顔を胸に押し当てて来た。
「ごめんな、ユニア」
胸元で泣きじゃくる少女の頭を撫でて落ち着かせようとする。
「早く私を殺せ‼︎」
「うっさい!ちょっと静かにしてて‼︎」
後ろからのドゥラルートの発言を辛辣な一言で返す。
こんなにユニアを泣かした原因を作った男だ。本当は殺してやりたい。
でも…
「ユニア…手、出して」
ゆっくりと出された白くて細い手をしっかりと握る。
俺はドゥラルートに…この国の人たちにわかってもらわないといけないのだ。自分のことを。
「なぁドゥラルートさん…俺はあんたらが思ってるような魔王じゃない。そんな好戦的ではないし、争いばっかの毎日なんてごめんだ」
俺の言葉をドゥラルートは何も言わずに聞いている。
「俺が願ってるのはこの国の…世界の平和だ。あんたの子供を斬ったのはすまないと思っている…でも」
俺の言葉を遮ってドゥラルートが立ち上がる。
「貴様の言い分はわかった」
「何もわかってない‼︎」
俺の発言にドゥラルートは驚き、こちらを向く。
「俺はあんたの子供たちになんの償いもできない…本当にごめん」
溢れてくる涙は抑えることができずにこぼれだす。
「でも、同じ国の人間として…エルフ族と仲良くしたいとは思ってる」
頭を下げながら続けた言葉にドゥラルートは言葉を失っている。
「わかってる」
「へ…」
「わかってると言ったのだ」
胸の中を込み上げる不安が流れ落ちていくのを感じた。
「ありがとうドュラルートさん」
「貴殿の方が立場が上だろう」
その言葉に背筋を伸ばして言い直す。
「これからよろしく、ドュラルート」
「あぁ」
ひと段落したところで、話題を転換する。
「早速だけどシャグルーから人に戻す方法ご存知?」
「いや、我々が知っているのはあくまで操る術までであって戻す方法は…」
泣いているユニアは小声で
「…んな、無責任な」
完全にユニアに同感なのだが、別に考えがないわけではない。
「わかった。じゃあこの場に一人連れてきてくれない?」
「それはお安い御用だが」
そう言って空中を巡回していたシャグルーが一体降りてくる。
「これでいいか?」
「完璧!」
俺は指を一本前に出し、一筋の光、アルムスの剣を出現させる。
ゆっくりと光の剣をシャグルーに近づけていく。当たった瞬間、シャグルーは人の姿を取り戻していった。




