第1章 9「大切なのはイメージ力です」
目を覚ますと外はもう夜になっていた。
「うぅ…ッイテ」
身体を起こすとミッダに殴られたみぞおちが痛んだ。
「起きたんですか?無事で何よりです」
ベッドの横にはユニアが座っていた。
「ごめん、心配かけたね」
「大丈夫ですよ全然」
ユニアは優しく微笑んだ。
「ちょっと待てよ…」
嫌なことを一つ思い出した。
…昨日確かミッダが部屋に来たのが22時ぐらい。
「ユニア今何時?」
「今ですか?今は22時ですよ」
唖然としてしまった。
「やっばい!ユ、ユニアちょっとごめん俺、行かないと!」
「行くってミッダさんとの特訓ですか?」
「うん。じゃあ行ってくる!」
「はい。行ってらっしゃい」
ユニアは優しく送り出してくれた。
階段を駆け上り。廊下を疾走して庭園についた。
そこにはミッダと飛鬼がいた。
「おっそーい。遅いんですけど。遅刻なんですけど」
ミッダが嫌味ったらしくそう言った。
「まぁまぁミッダさん。気絶させたのは自分なんだから…」
飛鬼はミッダにそう言った。
「はぁ…それもそうか。そんでは始めますか。オイ二人とも神剣出せ」
神剣というものの存在を全然理解していない。
隣に立っていた飛鬼は庭園のときの刀を出している。
「何してるんだ?早く出せ」
ミッダが急かして来る。
まぁ一か八か…
マサキは黒い大剣を出した。
「よし。じゃあチビ、剣を振ってみろ」
とうとうチビ魔王から魔王がなくなりチビだけになってしまった。
まぁそんなことより…
「俺まだ剣が振れないんですけど…」
「えぇ⁉︎振れないのにあの速度で?どういうことっすか?」
飛鬼は剣が振れないという俺の発言に驚いたらしい。
「お前さっき剣振り回してじゃん」
ミッダも不思議に思ったらしい。
「それが自分でもよくわかんなくて…」
「ふーん」
二人揃ってそう言った。
「さっきは『防御しよう』としたら剣が勢いよく振れて『突っ込もう』としたら剣が吹っ飛んだんです」
「なるほどなぁ」
ミッダは頭をポリポリ掻きながら続けた
「じゃあイメージしてみろ。自分が剣を持つ姿を…振る姿を」
「うーん」
出来る限りリアルにイメージしようと努力した。
剣を上げる…持ち上げる…
するとまた剣から炎が上がりゆっくりと上に上がった。
「おぉ持てた‼︎」
まさか剣を持つために必要な『力』を剣自身が補っくれるとは。
「よし。じゃあちょっと振ってみろ」
剣を上に上げて振り落とすイメージを作る。
すると剣は上に上がり振り落とす瞬間に加速した。
「おぉこれすげえ!」
語彙力の無いためこの感動を言葉にして伝えることができない。
「これではっきりしたな。こいつの炎を出すために必要なのは明確な『イメージ』だ。剣をどう動かすか考えることが必要なわけだ…」
ミッダがわかりやすく分析してくれた。
「よし!じゃあ魔王様が剣を振れるようになったところで皆で風呂にでも行きますか!」
「飛鬼さんは特訓しないんですか?」
「ん?俺?俺はただの見物人だよ」
見物するためにこんな夜遅くにここにいたんだ…
「まぁ今日は疲れたし風呂入って寝るべ」
ミッダがそう言うと男三人で大浴場へ向かった。
脱衣所で服を脱いでいると一つ思うことがあった。
二人の筋肉がすごい…
まさに『筋骨隆々』そんな言葉がよく似合う体つきだ。
ミッダがこちらの視線に気づき振り向くと
「っうわ。お前みぞおち黒いな」
それはミッダに殴られたところがあざになっていたからだ。
「まぁ大丈夫ですよ別に」
身体を洗い、湯船に浸かると
「ぷはぁー」
三人の言葉がシンクロした。
久しぶりに誰かと風呂に入るのが楽しく長い時間話し続けてしまった。
風呂を上がるころには三人揃ってのぼせてしまっていた。