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王子転生! ~王子は王子でも琉球第三王子!~  作者: 高見結
~王子は王子でも琉球第三王子~
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第89話 襲撃

 1576年 万暦4年 天正4年 6月末

 真南風(まはえ)を右手に受けながら舵を大きく切った告天号が鏡面のように穏やかな東海を滑るようにうふあがり島(大東島)へと向かう。

 一年分の五穀に建築資材、家畜等の積み荷を満載した馬艦船(マーラン)の船体は重心低く喫水線を下げ安定した航路を保ち、那覇からはるか東の方に位置する隠れ里ならぬ隠れ島のうふあがり島は、その島の頭上に上昇気流による積乱雲を頭上に頂き堂々と起立している。


「おおっ!やっと着いたな。北の停泊地に係留なのか?」

 真三郎の質問に答えるより先に穏やかであっても若干風が入る西ではなく、南うふあがり島の北側で風下にあたる停泊地に向けて舵を切り始める。

「へぃー!島の西と北側には吊るし上げ出来るように既に機材もそろえてありまさぁ」

何度も荷を運んでいる船頭が操舵室より遅れて返答する。

「樽金と三良は確か初めてだよな?」

甲板から徐々に近づき島の断崖を眺めていた真三郎が呟く

「はい、私は羽毛の質に産地の確認と」

卯屋の最高級商品、贈答用の試作が好評で今年の冬場の増産が目下の課題である高級布団の担当である樽金と

「俺は金武肥(きんひ)(グアノ アホウドリのふんの化石)の埋蔵量の確認が目的だな」

サトウキビの増産だけでなく他の農作物への効果も検証し始めた三良も張り切ってた様子で腕まくりしている。

「夏場は確かあのフラー鳥はいjumwjtpmdm!!」


うふあがり島の島影から突如、告天号の倍はある巨大ガレオン船が姿を現すと共に船首から白煙を上げる。

ピューーー ドドーンー!

告天号の前方、進路方向2間(200m)に水柱が立つ。

「ででで、殿下!船が!」

「い、いきなり撃ちやがった!」

「で、でかいぞ?ありゃぁ話に聞く南蛮船?なんでこんなところに?」

「は、話はあとだ!逃げるぞ!船頭!」

「「「よーそろー!」」」

「真三郎様は中に!」

(スペイン?ポルトガル?なんでこんなところに?どっちにしろいきなり撃ってくるとは 逃げれるか?)

ピューーーーー ドドドーンー!!

今度は慌てて方向を変えようとする告天号の後方1間(100m)に水柱が立つ。

「朝公様!旗が上がりました!

「ひゃぁ どっちの旗かわかるか?」

「どっちと言われても、南蛮人の種類はわかりませんが、白地に深紅の十字です!」

「せ、赤十字?じゃぁ平和の?」

「そ、そ、そ、その下に髑髏印の旗!間違いねー!か、海賊船だぁぁ!」

目の良い水夫が身を乗り出してガレオン船のマストと船首に上がる旗を確認する。

「赤十字じゃないとしたらベッカ、じゃない、イ、イングランド!イングランドの船?」


 ポルトガルにしてもイスパニアにしても琉球での公的な通商はマラッカ王国の不法占拠を理由に認められていないが、イスパニアはルソン島のマニラ、ポルトガルはマカオに居住権を得ており、そこを拠点にした出会交易を民間主体ではあるが行っている。

 交易が不調でいざとなれば海賊行為も辞さない武装承認ではあるが、主体はあくまで商人であるはずだった。


(キャプテンキッドって確かイギリスの海賊?(スパロー)の人もジャックだからイギリス系?これは生粋の海賊団か?)


「船頭!ぶ、武器は、告天に砲は積んでないよな?他に敵船影は確認出来るか?」

 

大きく舵を切った告天号が悲鳴のようにきしみながら船体を傾ける。

 倭寇調査の為、大島や先島を巡回し試作の大砲を4門乗せた御座船の告天二号と異なり、そもそも近海での荷役作業を主たる業務とする告天号には大した武装を備えていなかった。


「種子島が二丁に弩が四張ほどしか……」

 鮫や、海豚をついでに狩れる装備が申訳程度にしかないと船頭が謝罪する。

「周辺海域に他の船影ございません!見える範囲では一隻のみかと!」

「ひぃー神様!媽祖(まそ)様!ご加護を!」

龍神加那志(りゅうじんがなし)!龍神加那志!ご加護をたのむさぁ」

索を手繰り帆を動かしながら必死で神々のご加護を頼む船員達。

「真牛殿!死角となる左舷よりサバニを下ろします。漕ぎ手を四人程つけますので殿下をご無事に金武に!」

 ガレオン船の船足を見て逃走は困難と見た船頭が真三郎の避難を護衛役の真牛に提案する。


ピュー ドドドドーンー!!!


 大きく舵を切らなければ命中していただろう海域に大きな水柱が立つ。

「「「うわぁ」」」

慌ててきった再度の舵で船が左右に大きく揺れる。

「あれは恐らく停船信号、荷を満載した告天号では逃げきれません。恐らく今の砲撃も警告かと。殿下、ご決断を!」

 船首で旗を大きく振る人影、砲についても一発づつ狙いをつけるかのように徐々に照準があって来ている。

「お、俺一人逃げられるか!仕方ない帆を畳上げろ、白旗を!金目の物はないんだ。積荷の食糧で引いてくれれば……」


「わ、わかりましたが、せめて殿下はお隠れに」


ピュー ドドドドーンー!!! バリバリバリ!

 ガレオン船の砲が再び白煙をあげ、告天号の後方の帆の一部を掠めて大きく破る。

 慌てて白旗を掲げるも甲板やマストに登り曲刀を掲げ略奪への期待に目を輝かながら舌なめずりする海賊達の姿がはっきりと見えてくる。

(だ、だめだありゃ、陽気な海賊でも、戦闘が終われば皆で即宴会的なノリの海賊団でもない、ガチなやつらだ)

「さ、さ、三良!確か船倉の荷に小麦粉の入った樽がなかったか?海賊船が近づいたらそれをありったけ投石機で打ち込め、目をくらませたら転進して一か八か全速で逃げる!帆を張りなおすのも、漕ぎ手もこちらが有利のはず」


ガレオン船は三本マストに順風を受ける横帆にマスト間に張られた縦帆の複合型であり操作性は高いが、やはり本領を発揮するのは追い風にある。

(それに、うまく逝けば大砲の火に引火してチート知識の粉塵爆発!!この距離ならまじ逝けるかも!)

「そーとな?いけるな」


「はっ」

 後帆の一部を破られた告天号がゆっくりとメインマストの帆を畳み上げ観念したかのように船足を徐々に落とす。

 ゆっくりと鮫が獲物を襲うようにぐるりと告天号の周りを旋回したガレオン船も帆を下ろし背後からゆっくりと近づく。

船上には長い航海で伸び放題の髭に薄汚れてくたびれた服装、剣を抜いたいかにもカリブの海賊的な集団が甲板に殺る気満々で待ちかねている。


「ひぃっ!」


「さささんらぁは?」


「い、い、いちおー準備は」


「真牛、いざとなれば海に飛び込んで真三郎様を島まで、いけるな?」

樽金が覚悟を決めたかのように真牛に囁く。

「うむ」

「風向き  良し。  距離  良し 」

「放てぇ!帆を下ろせ!漕げ!漕げ! 船頭は射線に入らぬよう舵を」

ヒュー! ヒュー!!バリィン!


 接岸用に正確に角度を調整されていた投石機は狙い過たず四つの樽の内三つを甲板に、一つはマストに当りモクモクとたちこめる白煙で船上を満たす。

(粉塵爆発って、ちっ!しないか!そう上手くはいかないか  ん?)


 縦帆を主とするジャンク船の系統である告天号、後ろ帆に損傷を受けたものの、上部に畳上げる帆を一気に下すと風上側である南に向かって切り上がる。総櫓で漕ぎ出した船体は初速のもどかしさも兎も角、徐々にガレオン船との間を開けていく。


「どうだ?動きは?追ってくるか?」

威嚇射撃のひとつもないことに不信がる真三郎が後方の動きを確認する。

「それが、敵船影に動きは………動きはありません。停泊したまま風に流されているような」

先ほど射程距離である五間程に距離があいたことから様子を確認に帆柱に登った水夫の一人が声をだす。

「へっ?」

「ん?」

「もう二十間(二キロ)は離れろ!ぎりぎり様子が伺える位置を確保!周囲に他の船影はないか?いつでも逃げれるように。後、今のうちに後帆の確認を急げ!」

 筵の帆から明から仕入れた貴重な綿布をジャンク船の特色である竹の骨で補強、改良した特製帆の無残な姿を見つめる真三郎

「いざという時に備えて重い荷をいつでも捨てれるよう甲板に運べ!」

船頭の指示で船倉から米俵が上げられる。

「うーもったいないが、命どう宝、やむをえんな」




「真三郎様。先ほど同様、全く動きはありませんね。」

樽金が怪訝な表情で波間の彼方に漂うガレオン船を眺める。

「そうだな。二刻以上もはあのままだ。帆の応急処置も終えたし、偵察に行くか?」


「そうですね。獲物(我ら)を放って断崖絶壁の島にいきなり上陸できるとは思えませんし」


船頭の指名した四名の決死隊がサバニに乗ってそっとガレオン船にそっと近づく。






「殿下!大変にございます!息のある者もおりましたが、南蛮人は、敵賊は壊滅しております!」

一刻程ののち、息を切らせたサバニの決死隊が意外が報告を持ち寄る。

「へっ?」


「あの火傷の症状、まさに阿鼻叫喚の態、神罰にございます!はははっ!」


「流石は殿下!火の神(ヒヌカン)の、聖天の加護じゃぁありがたや!」


「にーへーでーびる 火の神さぁ!」


「よ、よく分からんが、脅されたようでなし、確認するか?」



「………なるほど生石灰ねぇ、うーん、俺は三良に小麦粉を投げるよう指示したんだけど」

ジト目で結果的には大金星を挙げた三良を見やる真三郎

「い、いやぁ、同じ粉なら小麦はもったいないと、船倉の手前にあった生石灰の入った樽を……まずかったですか?」


「いやいやいや、グッジョッブ三良君!石灰か、道理で眼や顔、いや全身に火傷をして身動き取れなくなったわけだ」


 琉球の漆喰は消石灰にふのりで粘りを与える大和の方式と異なり、生石灰に直接藁を混ぜて熱反応で藁の繊維すら溶かして粘りを出す。うふあがり島の普請用にと積んだ荷は当然危険極まりない生石灰であった。



「You scum sucker!」

「s、Son of a bitch !」

「H,Holy shit!」

(サノバビッチ!サノバビッチは分かる!やはりイギリス人か?)

「Bullshit!」


「ううっ、真三郎様、これは一体?」

 更に一刻、甲板の隅には既に両手を後手に縛られ転がされた海賊が二十二人。

 先見隊により海水を何度も汲んで洗い流したものの、生石灰による化学反応て発熱で甲板はヌルッヌルのツルッツル、海賊の元々端切れのような服だけでなく潮に強いはずの帆の一部や、索どころか顔も半ば溶けかかっている。

(ひぃーぃーゾンビ?流石に海賊でもこれは、うっぷっ)

余りの光景に吐き気を催す真三郎。


「乗員はこれだけか?もっといたようだが?」


「それが、半数以上は我らが近寄る前に海に飛び込んだようで、海面は赤く染まり数え切れぬ程の鮫がサバニの周りを周回しておりました。」


「ひぃー!さ、鮫か」

(く、喰われたのか?)

 重度の火傷に目も見えずひと思いにか、海水で石灰を流そうとでも海に飛び込んだのだろう。既にガレオン船の周辺海域には鮫による狂乱の宴の痕跡は見られない。


「船室や船倉に潜んでいる者は?」

 船尾の船楼から真牛が先導して確認していている。

「確認しましたが、潜んではおりませんでした。甲板に並べられた者で全てです」


「ここが船長室か?これは地図、地球儀もあるな、こっちの書類は全部持ち出しだな。久米には読める奴がいるかな?、絵図は大体把握できそうだな」

(これは話に聞く筆記体!アルファベットだけど草書並に読めないよなぁ)

流石に格段に豪華な一室を家探していく真三郎達。箪笥や壺を探すのは冒険者の特権でもある。


「殿下!!下層には大砲が大小何門も、玉薬も大量に!」

船首、船尾の左右に計八問の大砲、両舷には各10門づつの小砲が確認された。

「先ほどの飛距離からしても冊封使様よりお借りして写しを制作している仏浪機よりはるかに最新の品かと、玉薬が違うのかもしれませんな」

下層の大砲の発射口を調べていた水夫が歓声をあげる。

「船長室の奥に金細工に貴石をはめ込んだ宝飾品が!」

隠し戸を発見した三良がウハウハで見せびらかす。

「こ、これは異教の証では?」


「ぎ、銀貨が下層に大量に、いったい何千貫になるかわかりません!!」

悲鳴のような声をあげてコインに鋳造された銀貨を両手いっぱいに抱えた水夫が震えながら注進にあがる。

「食糧庫はほぼ空でした。かちこちにカビた饅頭のようなものに、白いカラ芋、黄色い豆のような物がわずかばかり、ネズミも姿も」

こちらはがっかりした表情

「告天号からうふあがり島への荷を降ろしたら、この船の荷を優先で移せ」


「船はいかに?」


「うーん、もったいないが流石にこの船を押収するのはなぁ、病も怖いし、いきなり操船も」


石灰の熱により消毒はされたはずだが、甲板は強アルカリでかなり痛み、それ以前の海戦によるものか、嵐にでも遭遇したのか破損個所を修繕した痕もあちこちある。よくみると太平洋を渡ってここまで来たのも不思議ほどのありさまである。


「船に詳しい連中で急ぎ図面や船体の構造を確認しろ、船長室より設計図らしき図面は押収しているが、金武で複製できる技術を得るんだ。急げよ」


「「「はっ」」」


「で、捕虜は如何に?」



「えーと ないす つー みーちゅー、みすたぁ? まい ねーむ いず ちょうこう、ばっどもすとこーる? まさぶろー?あんだすたん?」


「!!? You're really an ass!!」

「K,kill!!Uriiiii!」

「ま、真三郎様?何を?」


「え~と、アレだ、伯英殿が福州で手に入れた洋書?に書かれていた挨拶のつもりだったが、やはり通じないな、どうしよう?」

上手く誤魔化したつもりで、結局中学生並の英語力も身に付いていないことを再確認しただけの真三郎であった。

「うーん、治療は不可能です。問答無用で襲撃してきた海賊ですし、殿下に刃を向けた重罪人。せめてもの慈悲としてここは」

 一番の重傷者は鼻も瞼も唇も既に溶け、閉じることの出来ない口からは聞き取れないが怨嗟の声が途切れない。

 匙を投げた皆が真三郎に決断を促す。

「うっ!俺?わかった。…………すーはー、すーはー 海賊行為により南蛮人はし、し、死罪。積み荷は押収とする!」

「「「はっ!!」」」

火傷にうめき声を挙げ苦しむ南蛮人に対し次々に介錯を行う水夫達。

「ま、待て。判決をしたものの責として、お、俺も、、、 南無三!!」

悲壮な覚悟となけなしの責任感で父、尚元王より授かりながら腰の飾りとなっていた脇差しの鯉口を震える手で切る真三郎。


……………ふっ…………………………………………………


「「「ま、、真三郎様!!?」」」







※可燃性の低い粉では密閉されてないと爆破しにくいみたいです。その為に生石灰というより悲惨な目に………


※ドレーク船長の出港は1577年、後二年だらだらせずに話しを進める為に早めに出港したことに


※五隻の船団はスペインの植民地を荒らしまわりますが、太平洋側のメキシコで嵐に会い、旗艦だけが、世界一周してイギリスに戻り、イギリスの国庫に相当する財宝を献上します。

うち一隻が琉球まで到達していた設定でやんす。


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