第66話 宴
グロ表現、人を選ぶネタがありますが、今回だけです。次話には引きずらないのでご容赦願います。
三日三晩の祀の最終日、今宵の旅クェーナの篝火にそろそろ火がともされようとした時、万座毛の岬の沖合いに一艘の船が姿を現し、日が落ちる前までにに恩納の港に滑り込もうとする。
「あ……………あ、あれは!」
「こ、告天号!!
「キ、キター!」
「ま、間違いない!」
「つ、使いをだせ!鉦だ!太鼓を鳴らせ!」
「馬鹿!御無事を確認してからだ!」
「しかし、金武ではなく、恩納に……」
「み、みえたぞ!」
「おお!手を振っておられる!」
「殿下だ!殿下は御無事だぞ!!」
「狼煙だ!狼煙を上げろ!」
万願成就の祝いの狼煙が夕凪の刻限に助けられて真っ白な塊のような煙がゆったりと夕焼けの空へ立ち上る。
万座毛の岬から湾内に入った告天号は帆を降ろし、出迎える四隻のハーリーに繋いだ綱に曳かれてゆっくりと桟橋に向かう。
港を望む鴉那御殿前の浜には腰まで海につかった金武の民が鐘に太鼓を打ち鳴らしながらトウツルの草冠を被った馬達の唱和する海神の祝詞に合わせて踊りだす。
「「「アチャヌ ウェンガナシソーリ ヤ ユクンター ウフガミソーリ!!」」」
「真三郎様!あれは馬様に、かんジィ…………あんなに民が無事を祈って!」
三日目の夜とあって集まっていた民は徐々に減り二千を切ってはいたが、港まわりの浜を埋めつかさんばかりの賑わいである。
「あれは旅クェーナ!殿下、おそらく何日も殿下の御無事を祈願する祀で踊り明かしていたのでしょう。」
川満船頭が万座毛の丘に建つ火やぐらを見付けて真三郎に報告する。
「踊って?こんな?」
踊り明かすと聞いて腰に片手をあて、頭上に掲げた掌を翻す。
「なんの踊りです?旅クェーナとは念仏踊りの一種ですよ殿下。我らの無事を祈って不眠不休で恐らく数日は踊り続けたのでしょう。もっとも多くは交代しながらでしょうが火やぐらの燃えた痕数からも三日は続いてたのでは?」
無事に帰りついた安堵感からかハイになって台に立っておどける真三郎に、深刻な表情で過酷な儀式の概要を語る川満船頭。
「………………、皆には心配をかけたようだな。那覇で降ろした飛漣には悪いが、ここは、そうだな宴でも開いてねぎらうか。幸い金武の鍾乳洞に運ぶ予定だった泡盛も船倉に残ってるだろ?お前達も大丈夫か?」
「ヨーヨーサー!もちろん!その分の体力は残してまっせぇ!」
思わぬ苦労を共にした船員達の掛け声が轟く。
◆
「御無事の御帰還、なによりにございます。」
日も沈み赤く夕焼けに染まった空も蒼く色褪せてきた頃、桟橋に降り立った真三郎一行を馬を先頭に金武の留守居役達が出迎える。
「大金武王子朝公様!龍神加那志の御加護を持ちましての無事、御帰還、真におめでとうございます。」
片膝をついた馬がをなり神の儀礼で航海の無事を祝う。
「心配かけて悪かったな。馬さん、かんジィ、三良。それに、ん?上間親方の」
馬の後に並ぶ嘉樽とその巫女装束の裾をにぎる幼女の姿に驚く。
「恩戸ですわっ!私もいっぱいうーとーとしたのですぅ。」
馬、嘉樽にならって巫女姿の恩戸が頬をふくらます。
「ひょっ、ひょ、ひょ、真三郎様、仔細は後程ゆっくりと先ずは仮御殿に」
「真三郎様、樽、いや、首里や久米にも早馬を」
眼の下の隈も色濃く明らかに憔悴しきった三良が三重城、屋良森城の普請で不在中の樽金を心配する。
「大丈夫だ、三良。那覇沖で飛漣を一足早く降ろして首里と久米には知らせを出したよ。」
「そうですか、飛漣を。首里、いや君之様の何処壱では伽俚が食い尽くされるかも」
一気に気の抜けた様子で笑いを誘う三良にどこからともなく違いないとの声が湧き起こる。
「確かに違いないな。………オホン!馬さん。恩戸ちゃん、金武中の神女の皆様方に、踊り手の民達。川満船頭より旅クェーナの祀については伺いました。我らの為に本当にありがとう。参加してくれた民にも礼をしたいが………」
居並ぶ聴衆に向けて声を張る。
「いえ、此度の災禍もをなりである私の霊威不足。お気になさらず。民達には宴でも、実は朝方に真鶴様の予知がありましたので準備もすで………」
馬の言葉を遮る笑い声
「だっからよー!かんジィ。おバァはいったさー、真三郎様が今日帰ってくるって、心配いらんって」
集まった聴衆を掻き分けて腕捲りをしたかめオバァがかんジィの横に並ぶ。
「じゃが………」
オバァの調子に流石のかんジィもまるで形無し
「あれ!真三郎様ぁ、あー日に焼けてちゅらにーせーになってぃん。かめオバァはちゃーんと、わかってたさぁ!朝からいっぱい料理作ってたさぁ。」
「さ、流石はかめオバァの来客予知能力!船頭とも話たが、ちょうど告天号には泡盛の甕が大量に積んだままだ!いいか皆の衆!今日はこのまま宴会だぁ!」
何処かの倭冦集団が島々をめぐり強敵を倒した際に行われるような大宴会が万座毛の原で、旅クェーナ用の篝火を囲んで三日三晩の最終日、御礼奉納の一貫として行われようとしていた。
冊封使の来琉に備えて大屋子の屋敷の豚便所で大切に育てられていた豚が5頭、山羊4頭、鶏も10羽に大量の魚に芋、農民にはなかなか口に入らない米も麦や芋、豆で大量に嵩ましされていても炊かれており、夜半にも関わらず話を聞いて集まった周辺の村々の老若男女で三千もの大宴会である。
「クワッチーサービラー!」
「カリー!」
「クワッチーサービラー」
そこかしこで杯が重ねられ泡盛の入った甕が次々と空になる。
「ああー!殿様ぁ!先にやるなんてぇー」
「ま、真三郎様!よく御無事で………」
換え馬を乗り継いで久米から駆けつけた樽金が馬から降りるなり真三郎達の前に崩れ落ちる。
飛漣は挨拶もそこそこに食い物の列に並ぶ。
「樽金。本当に心配をかけたな。」
王命の普請を任せた上に那覇を素通りして恩納に入った真三郎が頭を下げる。
「全くです。馬様より御無事との使い入ったありましたが、真牛がついてながら……」
真三郎の後に控える真牛にジト目を向ける。
「い、いや樽金。流石に嵐はいかんとも………」
思わぬ被弾に慌てる真牛
「ひょ、ひょ、ひょ、樽金も言いたいことや相談しなければ成らぬことも山程あるじゃろうが、留守居の我らも一緒じゃら宴の場では無粋じゃよ。」
「そうだな、ほら樽金。飛漣を見てみろ!」
あごで視線を誘導する。
「うっ、馬の手配中に久米で伽俚と鰻を鱈腹、真三郎様のつけで食べてたはずが…………」
両手、だけでなくどこぞの雑技団のように二の腕の上にも皿を乗せて豚、山羊、鳥、魚の焼き物にいくつかのタレがかかった取り皿はなんと頭に乗っている。
「もぐ、もぐ、んなもん、とっくに消化したさぁ、樽兄ぃ!」
口にもはいっているようで呆れた樽金の力もぬける。
「そ、そうですね、今日だけはゆっくり御無事をお祝いいたしましょう!」
「あいっ!さーかめかめ!南瓜の煮物に、落花生の塩ゆでさぁ」
かめオバァ達が鍋に入っ煮物に笊に盛られた落花生を配り歩く
「これも朝公様が新たに植えられた作物じゃ!」
「全く、金武盛られた豊かになったのぅ、昔は食いもんは兎も角酒なんて正月にすら口にすることもなかったわい!」
「そうじゃな、大屋子の屋敷で冠婚葬祭でもなければ、」
「しかし、この肉は旨いなぁ」
「まいうー!」
「「クワッチーサービラー!」」
篝火からのおきをかき集めて遠火で炙られた豚からは芳しい匂いが立ち上ぼり、豚肉を食べたこともない民が野苺と黒糖に流れだした肉汁を煮立てた甘酸っぱいタレをつけて舌鼓を打つ。
「でーじ、まーさんど!」
「肉は初めて!」
「泡盛に合うなぁ!」
「おおっ!これが伽俚かぁ!まーさん!」
何故か「まーさん」と叫びながらほっぺたを指でぐりぐりする金武の民
「鳥を焼いたのに落花生を擂り潰して黒蜜と混ぜたタレも合うぞ!」
真三郎が久米の店で出そうとかめオバァと試作していたメニューがお披露目される。
「朝公様!このうふあがりのサワラの干物、旨いですな!」
士族席に座る駆けつけた周辺の村の大屋子の一人が土産の干物を肴に泡盛を煽る。
「うむ、これは旨い!」
「誰か!俺にも!」
豚便所事件以来、猪か喜瀬武原の御用牧の豚しか食べず、山羊はいまいち臭いに弱く魚と野菜のみが御膳に並ぶ。
腐っても真三郎は金武王子、首里天加那志に何かあれば万天の君となりうる第一王位継承者の地位にある王族である。当然毒味以外で他人が箸を付けた残りを食べる事はない。
炙られた尾頭付きの干物が御膳に出され、まだまだ未熟で酸っぱい青切りシークワーサーを軽く搾って口にいれる。
(こ、これはホッケ!いやホッケより脂の乗った魚だなぁ。とろける本鮪の大トロ並!!)
「うん、これは旨いなぁ」
基本南の魚は北の寒いところの魚と比べ脂の乗りがなく、県魚のグルクンの様に油で揚げて足りない脂を補う食生活が発達したのだった。
無事の帰還の祝いを述べる客人に礼を述べながら宴は続き、広場の熱気とアルコールが入った開放感から月明かりの下、ハブのいない芝生の原である。二人、四人と若者達は物影に消え、来年の春には空前絶後のベビーブームが金武間切を賑わらせるのはまた別の話。
◆
翌朝
建設途中の仮建物の鴉那御殿、湯屋にて水を浴びて身体を軽く拭いサッパリした真三郎が着替えて朝膳の席に就こうとした時
ツーーー
「ん?まだ濡れて……………」
(な、なに……………)
真三郎の太股をつぅーっと何かがねっとり伝う。
「み、水ぢゃない、」
太股を撫でる指に感じるぬるっとした感触に真三郎の全身がブルッと震える上がる。
クンクン
(ぐ、くっさっあ!なんじゃこりゃ、はっ!まさかこれは今はやりの入れ替わり、いやTS転生物か!!)
指についた液体ね臭いを嗅いで思わず鼻をしかめる。
「ほっ!」
そのまま胸と股間に手を伸ばし、まだまだ成長途中、立派とはいいがたいがそれなりの物の感触を確かめ、がっかり、いや一安心する。
「じゃあ……」
恐る恐る手を伸ばし謎汁の出どころが*からであり、他に出所がないことを確認する。
(まぁ匂いを嗅いだこともないけど、そもそも血の色でも……両性ってことはないよな、や、病?…………ガクブルガクブル)
「真三郎様!朝膳の仕度が出来たそうです」
「わ、悪い、真牛!昨日の今日だ。今日は体調も悪いので、評定も明日に延期だ。今日は眠りたい。」
「かしこまりました。寝室に湯茶を運ばせますので今日はごゆっくりと。明日には首里から安李様も参る予定です。」
「あ、ああ。頼む。」
……………………………
インガンダルマ
うふあがり 大東島周辺に生息する深海魚で夜に浮上することがあるバラムツと呼ばれるカマス科の仲間である。人体では分解されないワックスエステル脂質を大量に含み、食べ過ぎると尻から油が垂れ流れる危険な魚である。
濃厚な脂は美味で韓国では白鮪として食卓に上ったり、アメリカの回転寿司でトロの偽装食品として並ぶこともあるが、販売、流通禁止の魚である。
刺身は四切れ、干物にして水分を飛ばしたものを数切れ以上口にすると下の口から終末を告げる○○○な状態になるのであった。
グロより、スカネタ?
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